研究課題
本研究は、鉄の多胎効果に注目し、物性物理の土俵でヘムタンパク質を電子論的に議論することを目的としている。具体的には、放射光の物性研究で成功を収めた数値シュミレーション法をヘムタンパク質に適用し実験スペクトルと比較することで、そのさまざまな機能に関するヘム鉄の電子状態を理論的に解明することである。本研究で挙げた具体的な計画項目は、①鉄の多体効果とポルフィリン環の強い混成効果とを同等に取り扱うことのできるクラスター模型の構築、②基質分子の可逆的な吸脱着による鉄の電子状態変化の機構解明、③ヘム鉄の局所的な構造変化が鉄の3d電子状態に与える影響、の三つであった。昨年度、①のクラスター模型の解析的模型の模築に成功したが、プログラミングの過程で予想していなかった計算機コードのバクがあることが判明していた。そのため、本年度はまずそのバグの修正を行い、その後、②の基質分子による鉄の電子状態変化の機構解明という二つ目のステップを集中的に行った。ミオグロビンのヘム鉄の第6配位子に吸脱着する分子の典型分子としては、O2、H2O,CO,NO等がある、が本研究ではこれらすべての基質分子の分子軌道を計算し、これらの分子とヘム鉄との吸着の様子を調べてきた。特に基質の違いにより共鳴X線発光スペクトルにどのような変化をもたらすのか、電荷移動エネルギーの効果はどれぐらいあるのか、ポルフィリン環の歪の効果はどれぐらい重要なのか、スピン状態の変化する要因なのどを集中的に行った。その結果、当初の予想通り電荷移動エネルギーは基質によって大きく変化することが分かり、これが鉄の価数状態を変化させていることが明らかとなった。しかし、基質の変化によるスピン状態の変化や歪の効果が果たす役割についてはまだ解明できていない。
3: やや遅れている
昨年度の理論模型のにおいて当初予想していなかったバグが発生しその修正を本年度の最初に行った。このバクの修正は取り除くことに成功したが予想以上に時間がかかってしまった。現在はその次のステップにはいっているがその影響がでているため当初の予定より若干の遅れが生じている。
バグの修正後は、当初の計画通りのステップ②に突入しており順調に研究は進行している。初年度での遅れを取り戻す必要があるため研究の速度を加速していく予定である。
本年度購入した、大型計算機が予想より低価格で購入することができたため、少額(約160千円)ではあるが繰越が出た。
次年度は、論文を出していかなければならないので、論文投稿費等にとして使用したい。
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