研究課題/領域番号 |
25400337
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 三郎 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60171485)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁性絶縁体 / スピン流 / スピンホール効果 / スピンホール磁気抵抗効果 / 磁化ダイナミックス / スピントルク共鳴 |
研究実績の概要 |
非磁性金属と磁性絶縁体からなる2層の接合膜に交流電流を印加すると、非磁性金属層のスピンホール効果によって磁性絶縁体にスピントルクが働き、電流駆動の強磁性共鳴が生じることを見出した。この現象は、磁性絶縁体/金属接合界面におけるスピン角運動量の移行と金属層で強いスピンホール効果によって発現する。非磁性金属膜に電流を流すと、スピンホール効果により非磁性金属膜にスピン流とスピン蓄積が生じ、その一部は接合界面を通して強磁性絶縁体層に吸収される。吸収されるスピンの量は強磁性絶縁体層の磁化の向きに依存するため、非磁性金属膜内のスピン流が変調を受け、逆スピンホール効果により印加電流が変調される。この現象は、スピンホール磁気抵抗効果(SMR)と呼ばれる。本研究では、磁性絶縁体として知られるイットリウム鉄ガーネット(YIG)とスピン軌道相互作用の強い白金(Pt)の接合膜に注目して、ギガヘルツの交流電流誘起のスピンホール効果を介した磁性絶縁体の磁化ダイナミクスを理論的に研究した。本年度は、交流電流下でのYIG/Pt接合膜におけるスピン流と磁化の相互作用を調べるために、前年度に見出したスピンホール効果磁気抵抗を用いて、電流駆動のスピントルク強磁性共鳴を検出する方法を提案した。交流電流が誘起するスピン軌道トルクを含むランダウ・リフシッツ・ギルバート方程式を導出して磁化ダイナミクスを調べ、SMRによる整流効果によりPt層に生じる直流電圧を計算した。直流電圧の膜厚依存性を調べることで、交流電流が駆動するスピン軌道トルクにより磁性絶縁体の共鳴磁化励起がどの様に整流電圧を生じるかが明らかになった。本研究の理論的予言はミュンヘン大グループによりYIG/Pt接合膜を用いて実験的に検証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度中に、磁性絶縁体とスピン起動相互作用の強い金属からなる2層の接合膜において、「電流誘起スピントルク共鳴」の理論を構築することができた。交流電流下で金属層に誘起されるスピンホール効果により磁性絶縁体へスピン流が注入され、スピントルク移行による磁気共鳴が生じこと、スピントルク磁気共鳴はスピンホール磁気抵抗効果を利用した整流作用によって直流電圧として観測されることを示すことができたので、おおむね順調に進展している
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今後の研究の推進方策 |
強磁性金属(NiFe)、非磁性金属(Ag)、強磁性絶縁体(YIG)からなる非局所スピン注入素子を用いて、非局所スピン注入磁化反転を調べる。スピン注入側のNiFe電極とAg細線 の間にMgOトンネル障壁を挿入することによりスピン注入効率が格段に向上することが理論的・実験的に実証されている。Ag 細線上に微小なYIGディスクを置くと、Ag細線に蓄積されたスピンがYIG に吸収されて、スピン流がYIGに流入し、YIGの磁化に大きなスピントルクが働く可能性がある。磁性絶縁体に吸収されるスピン流の大きさが、界面スピンコンダクタンスやAg 電極のスピン抵抗にどの様に依存するかを明らかにする。YIG などのギルバート緩和定数が小さい強磁性体絶縁体に対するスピン注入磁化反転の条件を調べ、磁化反転の閾値電流の低減化が可能であることを示す。新たな研究課題として、強磁性体絶縁体と非磁性金属(Ag、Au)を組み合わせた2層ナノ構造膜や多層ナノ構造膜を用いて、交流電流の印加によって引き起こされる磁化のダイナミックス(スピンポンピング、磁化緩和など)、層間交換結合の効果、およびスピン注入磁気共鳴を利用したスピントルク・ダイオード効果を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことにより発生した未使用額である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の使用額は、平成27年度請求額と合わせ、平成27年度の研究遂行に使用する予定である。
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