研究課題
本課題研究の目的は、第一原理電子状態計算の手法を用いて、固体中の原子位置での電場勾配の微視的な起源を明らかにすることを計算手法として確立することにある。電場勾配を与える物理量の成分分析を行うことの利点は、微視的な物理描像が得られるばかりでなく、実験結果との不一致の原因を微視的な視点から明らかにすることで、電場勾配の計算方法の改良にもつながる。今年度は、成分分析のプログラムを部分的に作成し、電荷分布の変化の微視的な起源と電場勾配の相関に関して新しい知見を得た。SmB6においては、圧力を印可し格子定数が小さくなると同時に4f電子数が少なくなるが、この時にB位置の電場勾配が減少するという実験結果の原因を探るために、格子定数を変化させずに人為的に4f電子位置を変化させてf電子数の減少と電場勾配の相関を見た。確かに、f電子数が減少するとB位置の電場勾配は小さくなるが、その原因は4f電子数の減少によるSm位置からの電場勾配の変化の影響によるものではなく、減少した4f電子がB位置に移動して増えたB位置からの寄与の変化に依る処が多いことが分かった。また、TaPのTa位置のNQRの実験との比較を通じて、電気八極子相互作用を示唆する結果を得ており、その解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的である成分分析のプログラムの作成は計画より少し遅れているが、その中で順調に興味深い結果が出ている。一方で、スピン軌道相互作用における相対論的質量補正の効果や、反転対称性のない原子位置における電気八極子相互作用の影響を示唆する結果など、研究当初では予想できなかった重要な進展を見せている。
現在進行中の成分分析のプログラムを早期に完成させる。これを用いて、SmB6やLaOBiS2系のBi-NQR周波数のF置換依存性などの理由を明らかにする。TaPにおけるTa位置のNQR実験と電場勾配の解析を通じて、高次多極子からの寄与の有無を明確にする。
研究が順調に進んでおり、次年度以降に発表のための旅費や論文経費などとして使用するため。
ドイツとの共同研究の研究打合せや論文掲載料やオープンアクセス料として有効に利用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 2件、 査読あり 12件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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