研究実績の概要 |
本研究課題は、幾何学的フラストレート系スピネル化合物を研究対象として、主として超音波音速測定により新奇な磁気揺らぎおよび磁気励起の研究を行うものである。平成27年度の主な研究実績は以下の通りである。 軌道縮退系コバルトスピネルCoV2O4について、単結晶を用いた超音波音速測定を行った。バナジウムスピネルAV2O4(A = Mg, Zn, Cd, Mn, Fe, Co)は、パイロクロア格子を形成するVイオンが軌道自由度を有しており、軌道整列を示すフラストレート磁性体としてこれまで活発に研究が進められてきた。本研究課題でも、平成25年度にMgV2O4の超音波音速測定による研究を行っている。一般にAV2O4は、磁気相転移に加えて軌道整列に伴う構造相転移を示すが、CoV2O4は150 Kでフェリ磁性転移を示すものの低温まで構造相転移を示さない点が特徴的である。最近の研究からは、CoV2O4ではフェリ磁性相において軌道整列ではなく軌道グラス状態が発現しているとの指摘がなされている。またCoV2O4は、AV2O4の中で唯一圧力印加により金属性を示す興味深い特性ももっている。このことは、CoV2O4がAV2O4の中で最も遍歴性の強い磁性を有することを示しており、軌道グラス状態とも関連があるものと考えられる。本研究では、CoV2O4について全ての独立な弾性モードの音速(弾性率)の温度依存性を測定し、この物質における相転移および磁気励起に由来する弾性異常の観測を試みた。その結果、常磁性相では遍歴性の強い磁気励起に由来する弾性異常を、フェリ磁性相では局在性の強い磁気励起に由来する弾性異常を観測した。さらに、フェリ磁性相内で軌道グラス転移および軌道整列が逐次的に起こっていることを示唆する弾性異常を観測した。
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