研究課題
銅酸化物高温超伝導体の超伝導転移温度Tcは、単位胞に含まれるCuO2面の枚数を増加させるにつれ増加傾向を示すことが経験的に知られている。その機構を解明し、更なる高Tc物質開発の指針を得るためには、多層型高温超伝導体(CuO2面を3枚以上有する物質)の不足ドープ域に見出された「反強磁性金属相」の物理を理解することが重要である。詳細な物性研究には単結晶が必要である。ここでは、三層構造のBi系高温超伝導体(組成:Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ 、略称:Bi-2223、Tc≒110K)に着目し、その不足ドープ単結晶の育成法を研究した。昨年度は、Bi-richな原料棒組成と還元雰囲気を用いて得られた単結晶に30min程度の短時間の真空熱処理を施すことによって、従来より不足ドープな単結晶を得たことを報告した。しかし、結晶表面の劣化、大きな残留抵抗率、そしてしばしば低温で半導体的振る舞いに転じる、などの問題を抱えていた。これに関連して、最近電子ドープ型の高温超伝導体で、多結晶粉末で結晶を覆いながら熱処理を行うプロテクト・アニール法が提案されている。今年度は、この方法をBi-2223に適用し、上述の問題解決を試みた。その結果、Tcが約70 K程度の均一で高品質な不足ドープ単結晶を得ることに成功した。「反強磁性金属相」まで、もう一歩である。また、単結晶そのものを高品質化できれば、より一層の不足ドープを実現できると期待される。そのために、レーザー光による急峻な温度勾配を用いた単結晶育成実験を本格的に開始した。しかしながら、今のところBi-2223相の育成には成功していない。成長温度が高すぎることが原因と考えている。一方で、装置立ち上げの確認のためBi-2212単結晶を育成したところ、きわめて良好な結果を得た。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Physics Procedia
巻: 65 ページ: 53-56
10.1016/j.phpro.2015.05.116
巻: 65 ページ: 13-16
10.1016/j.phpro.2015.05.096
巻: 65 ページ: 49-52
10.1016/j.phpro.2015.05.113