研究課題/領域番号 |
25400350
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
吉澤 正人 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30220619)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超音波測定 / 強相関伝導系 / パルス磁場 / ウラン化合物 / 低温 |
研究実績の概要 |
本研究は、パルス磁場中の超音波測定により、強相関電子系の未解決の問題に取り組むことを目的とする。平成26年度はURhGeの量子臨界点近傍の弾性的性質の解明に焦点を当てた。URhGeはTCurie=10.5Kに強磁性相転移を有し、TCurie以下でc軸方向に強磁性が出現する。この物質はb軸方向に磁場をかけるとHR=12Tで強磁性相は消失し、代わって、超伝導相が出現する。この物質の弾性的性質に関する報告例はこれまでになかった。今回、我々は、パルス磁場を用いて超音波測定を行った。 超音波測定は、パルス磁場を用い、4.2Kから100Kまでの温度範囲で詳細な磁場依存性の測定を行った。本研究では、URhGeがTCurieにおいてc軸方向の自発磁化が、b軸方向の磁場中ではHRにおいてその方向にスイッチするという性質に着目し、磁場方向Hをb軸に、音波の伝搬方向kをa方向に固定して、音波の振動方向uをb方向とc方向にそれぞれ変えたC66とC55の測定を行った。C66はHR以下で強磁性磁気モーメントと音波が結合し、HR以上で結合が切れるモード、C55は逆に、HR以下で磁気モーメントと音波が結合せず、HR以上で結合するモードである。 磁場依存性から変換したC66の温度依存性では、音波と自発磁化が結合する(u⊥c)C66には顕著な弾性軟化現象が観測された。Jahn-Teller解析によると、Jahn-TellerエネルギーEJTは0.35K~0.51K程度であった。一方、C55には異常な振る舞いは観測されなかった。 本研究では、URhGeのパルス磁場中の超音波測定を行い、C66に現れる顕著な弾性異常を発見した。この弾性異常は、HRのQCP近傍において、鉄系超伝導体やURu2Si2と類似の挙動を示し、QCP近傍における弾性異常の共通な振る舞いであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去に研究例のないURhGeの弾性定数の温度依存性と磁場依存性を測定し、量子臨界現象に起因する興味深い物理現象を発見するなど、当初の研究計画に合致した研究過程であるので。
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今後の研究の推進方策 |
URhGeについては、C55とC55以外の弾性定数の測定も行い、URhGeの不思議な性質の解明を進めてゆきたい。併せて、URu2Si2や鉄系超伝導体SrFe2(As1-xPx)2やFe(Se1-xTex)系等についても研究を行い、これらの系に観測される量子臨界現象について、普遍的な学理を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の経費が残り、次年度の予算と合算して使用することが本科研費を有効に使用することになると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、物品費300千円、旅費500千円、人件費300千円を計上している。平成26年度繰越金は、平成27年度の物品費と合わせて使用したい。
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