本研究では、URu2Si2等のウラン化合物のパルス強磁場中の超音波測定を行い、関連する物質との比較を通じ、これらの物質群の未解決の問題に取り組むことを目的とした。 平成27年度は、URu2Si2とURhGeの量子臨界現象の解明のために、参照物質SrFe2(As1-xPx)2とFe(Se1-xSx)の研究と、高磁場中の超音波測定手法を開発を行った。 鉄系超伝導体SrFe2(As1-xPx)2は量子臨界点(QCP)周辺の試料x=0.28、0.35、0.46の超音波測定を行った。アンダードープ側からQCPに近づく弾性異常の振る舞いはBa(Fe1-xCox)2As2と類似であり、構造的量子臨界現象の振る舞いを示す事が分かった。Fe(Se1-xSx)の研究についても同様の現象が確認された。 高磁場のパルス磁場中の超音波測定を行うために、クライオスタットを金属製からFRP製に取り替えるなどの改良を行い、ビスマスの超音波測定を行い、低磁場では量子振動、高磁場では相変化に伴う異常の観測に成功した。 本科研費の研究期間を通して以下の結論が得られた。(1)URu2Si2に関しては、36TのQCP近傍で現れる弾性異常の系統的研究を行い、(C11-C12)/2弾性定数に加えて、C66にQCPの振る舞いを発見した。(2)URhGeのパルス磁場中の超音波測定では、C66に顕著な弾性異常とQCP的振る舞いを観測した。(3)ウラン系の弾性異常は鉄系と比較して1桁以上小さく、Jahn-Teller温度も約1Kであり、QCPの起源は磁性であると推測される。(4)QCP近傍の振る舞いは鉄系超伝導体と類似の点と相違の点があり、その原因は、QCPの起源や系に内在する局在電子と遍歴電子の二重性(Duality)に起因すると考えられる。
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