研究実績の概要 |
導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸) (PEDOT/PSS)の電気伝導機構を解明するために,極低温電気抵抗測定,構造解析,走査トンネル顕微/分光(STM/STS)などを行った.PEDOT/PSSの結晶性や配向性を制御する手法として,エチレングリコールなどの溶媒の添加と成膜時における磁場の印加効果に加え,膜の固化方向を一方向に揃えるエッジキャスト法を開発した.エッジキャスト法では,L字型の壁面を持つシリコン基板上にPEDOT/PSS水分散液を塗布することで,壁と垂直方向に薄膜を固化することが可能になった. 磁場印加法とエッジキャスト法で作製したPEDOT/PSS薄膜に対して,電気抵抗測定,赤外偏光反射測定,放射光X線測定,走査トンネル顕微鏡測定などを行った.その結果,磁場印加法の場合は磁場方向と垂直に,エッジキャスト法の場合は膜の固化方向と垂直にPEDOT高分子が配向し,この方向に高い電気伝導性が現れることが分かった.この結果より,磁場印加法やエッジキャスト法はPEDOT鎖の配向性を制御するのに有効であり,PEDOTの結晶性を高めるエチレングリコール溶媒の添加と合わせることで電気伝導特性を改善できることが分かった. PEDOT/PSSの微細構造と電子状態に関する情報を得るために,走査トンネル顕微鏡(STM)測定を行った.その結果,エッジキャスト法で作製したPEDOT/PSS薄膜では,ドロップキャスト法で作製した薄膜とは異なり,繊維状の微細組織を示すことが分かった.また,繊維状の微細構造は固化方向と垂直であることから,ナノスケールのコア/シェル構造の配列が影響を受けて微細構造に繊維状の配向性が現れたものと考えられる.
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