| 研究課題/領域番号 |
25400354
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| 研究機関 | 東北大学 |
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研究代表者 |
藤田 伸尚 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (70431468)
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| 研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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| キーワード | 準結晶 / 近似結晶 / アルミ合金 / Ｘ線回折 / 電子線回折トモグラフィ / 構造解析 / カノニカルセル / クラスタ |
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| 研究実績の概要 |
１．実験課題（４）a. 平成25年度にＸ線回折によりa=40Å及びa=60Åの立方格子の周期を持つ近似結晶の存在を見出した合金試料Al-Pd-Mo-Feに対して、電子線回折トモグラフィ法を適用した。その結果、上記の２種類に加えて、新たにa=120Åの立方格子の周期を持つ結晶、a=28Å、c=34Åの六方格子の周期を持つ結晶を発見した。これらの４種類の結晶はいずれもa=20Åの立方格子の周期を持つ同一の基本構造に対する超構造であることが判明した。b. 先行研究により複数の近似結晶相の存在が報告されていた合金系Al-Pd-Ruに着目し、構造解析を目的とした単結晶育成を行った。その結果、a=40Åの立方格子の周期を持つ近似結晶の良質の単結晶試料を得ることに成功した。この結晶は空間群Pa-3を持ち、既に我々がAl-Pd-Cr-Feにおいて構造を決定したものと同一の構造を持つと予想される。また、この試料から質の良い単結晶Ｘ線回折データを得た。
２．理論課題（５）平成25年度と同様に、「点集合置換法」に基づく計算機アルゴリズムを用いて長周期カノニカルセルタイリングの作製を進めた。また、カノニカルセルタイリングにおける局所的なタイルのフリップモードを調べた。これらのフリップモードは局所的なクラスタの再配列の自由度に対応し、エントロピー項を介して構造安定性に寄与すると考えられる。さらに、周期境界条件を用いないで点集合置換法を適用したところ、カノニカルセルに対して無限に反復可能なインフレーションルールの存在を見出した。これにより準周期的なカノニカルセルタイリングの存在を世界に先駆けて証明した。また、この準周期タイリングが大域的に正二十面体対称性を破っており立方対称性を持つことを見出した。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
（１）当初目的では、アルミ基正二十面体準結晶の新しい近似結晶を探索し、その構造解析を行うことを目的としていたが、平成２６年度には前年度に引き続きAl-Pd-Mo-Fe合金において新しい近似結晶を発見することができた。また、これらの近似結晶はいずれも非常に複雑な構造を持つにも拘わらず、ある一定の基本構造の超構造として理解できることを見出した。これらの知見は、アルミ基正二十面体準結晶やその近似結晶の構造理解を推進する上で重要な知見である。また、巨大単位胞を持つ複雑な合金結晶の構造を調べる上で、電子線トモグラフィ法が有効な手段となりうることが示されたことも大きな意味がある。さらに、Al-Pd-Ru合金においては先行研究によって報告されていた近似結晶相に対して、良質の単結晶の育成に成功した。これによってこれまで行われてこなかった詳細な構造解析を行うことが可能となった。以上のように、実験課題では当初予想していなかった進展が見られ、今後の研究の可能性が広がった点で有用な成果が得られたと言える。
（２）理論課題において、準周期カノニカルセルタイリングを生成する為のインフレーションルールを世界に先駆けて発見したことは、正二十面体準結晶の構造研究において重要な成果である。生成された準周期タイリングは立方対称性を持ち厳密には正二十面対称性を破った構造である。この構造は、Al-Pd-Mn合金において実験的に報告されている立方対称性を持つ準周期構造と関係している可能性がある。一方、厳密に正二十面体対称性を保持した準周期カノニカルセルタイリングが存在するのかどうかについての検討を続ける必要がある。
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| 今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究計画で目指していた以上の成果が得られたので、これを足掛かりとして平成27年度も本研究課題をさらに推進する。具体的には、（１）合金系Al-Pd-Mo-Feにおいて見出された複数の近似結晶相について、カノニカルセルタイリングを活用した構造モデリングを行う。特に、モデルから計算した回折パターンと実際の回折データを比較し、実験データを最も良く再現する構造モデルを同定する。（２）これらの近似結晶の形成条件を詳細に調べる。特に、温度と構造形成との関連に着目し、熱処理温度を変化させて作製した試料に対して放射光による粉末Ｘ線回折測定を行い、構造変化を明らかにする。（３）単結晶Ｘ線回折データを用いてAl-Pd-Ru近似結晶の結晶構造を決定する。（４）「正二十面体対称性を持つ準周期カノニカルセルタイリングの存在証明」を目指して研究を進める。（５）得られた成果を論文にまとめて投稿する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
平成26年8月にカナダ（モントリオール）で開催された国際結晶学連合の総会に出席する予定であったが、同じ日程で京都で開催された国際会議に招待講演を依頼されたため、前者への出席を急きょキャンセルした。従って、海外渡航の為の費用が余った。
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| 次年度使用額の使用計画 |
平成27年8月から9月にかけての約二週間、クロアチア、及びチェコにおいて結晶学、及び非周期結晶に関する国際会議への出席を予定しており、そのための渡航費用として使用する。また、9月と3月に開かれる日本物理学会に出席するための旅費、及び、SPring-8において放射光Ｘ線回折実験を行う為の旅費として使用する。その他、消耗品類、論文投稿料等で使用する。
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