研究課題
今年度は、BiS2正方格子面を持つ新規超伝導体CeO1-xFxBiS2の電子状態をX線吸収分光によって測定し、超伝導と強磁性が発現する試料ではCeの原子価が3+であるのに対して、それらが発現しない試料では4+の成分が共存する価数揺動となっていることが分かった。この測定結果に基づいて、Bi 6p軌道とCe 4f軌道の混成と価数揺動、強磁性の関係についてモデルを提案した。また、AuTe2三角格子面を持つ超伝導体Au1-xPtxTe2の電子状態をX線吸収分光と光電子分光によって測定し、Auの原子価が+2に近い一方でTe 5p軌道にホールが収容されていることを明らかにした。この測定結果から、AuTe6-八面体がJahn-Teller効果によって変形すると同時にTe 5pホールの電荷分布に偏りが生じることよってAuTe2が理想的な三角格子から変形することが示唆された。さらに、PtドープがJahn-Teller効果を抑制することによって格子変形が解消されて超伝導が発現する、というモデルを提案した。これらの研究成果は、同年度中にPhysical Review B誌に掲載され、新規な層状遷移金属カルコゲナイドの電子状態に関する最新の研究成果として注目されている。
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度に引き続き、国内外の放射光施設において当初計画以上のビームタイムを獲得することができた。また、今年度は、サバティカル研修を得てイタリアのローマ大学において客員教授として本研究課題に関する研究を集中的に展開することができたため、昨年度を超える15編の原著論文を出版することができた。
次年度は今年度以上の多数のビームタイムがすでに決定しており、また研究対象となる遷移金属化合物も豊富な状況である。研究の最終年度にあたりこれまで以上の成果を挙げるべく注力する。
2014年度前半はローマ大学に長期滞在して集中的に研究を推進することができたが、逆に2014年度後半はその反動で所属機関での業務を例年よりも多く負担しなければならず後半での研究時間が減少して研究費に余剰が出る結果となった。また、次年度は今年度以上に国内外でのビームタイムが約束されており、未使用分を次年度に使用することによって、より有効に研究費を活用できる。
次年度は今年度以上に国内外の放射光施設でのビームタイムが確保されており、今年度の未使用額とあわせることによって有効に研究費を活用して成果を挙げていく計画である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 謝辞記載あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Physical Review B
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