最終年度は前年度に引き続き正方格子ハバード模型の光学伝導度の研究を行い、「反強磁性秩序」相における頂点補正の効果を取り入れた計算に成功した。まず、対称性低下に伴い必要となる再定式化を行い、副格子自由度を含めた頂点補正の新しい表式を導出した。4サイトクラスター動的平均場法プログラムにこの表式を組み込み、大規模数値計算を実行した。この計算は準二次元系の結果に対応する。 新しい数値計算の結果、常磁性相で既に大きい光学伝導度の頂点補正が反強磁性においてはさらに増強されることを発見した。頂点補正の詳細な解析を行い、特徴的な温度および周波数依存性を明らかにした。最も重要な特徴として、頂点補正はどの温度においても周波数変化に伴う変動を拡大する。常磁性相ではドルーデピークおよび高周波数インコヒーレントピークを共に増大させシャープにする効果をもつ一方、反強磁性相では零周波数に現れるくぼみを大きくする。その結果、直流伝導度は高温領域では増大し、低温領域では逆に減少する。さらに、昨年度発見した転移温度近傍の常磁性相において直流伝導度が絶縁体的な温度依存性を示す領域で、周波数依存性にはドルーデピークが存続しており特異な金属状態にあることを新たに発見した。また、頂点補正へ寄与する各種の揺らぎの詳細な解析より、反強磁性相においてはスピン依存するグリーン関数を含む部分から寄与が大きく、また異なる副格子上の粒子と正孔から形成される揺らぎが支配的な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、頂点補正の運動量依存性を解析し、反強磁性相では準粒子間の相関の運動量依存性が大きく変化することを発見した。これらの研究成果を論文にまとめ、学術誌へ投稿した。
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