研究課題
磁気交換相互作用(T_RKKY)と近藤効果(T_K)が拮抗する重い電子物質では圧力・磁場の負荷により、基底状態が逆転する量子相転移(QPT)を起こす事がある。QPTは絶対零度(0K)の量子臨界点(QCP)で起こるので、その量子効果や臨界現象は低温であればあるほど顕著である。本研究は重い電子物質CeAl2の圧力誘起QPT(臨界圧力Pc~2.8GPa)を超低温にて観測する事を目的とした。精密な物性測定により、QCP近傍にて量子ゆらぎが顕在化した臨界現象を探索する事を目指した。本研究の準備として、まずCeAl2及び関連物質の単結晶試料育成、及び結晶構造や大気圧下での基礎物性測定を行った。特に、組成誘起QPTを起こす(Ce,Er)Al2を発見した。次に超低温高圧下における物性測定のため、有限要素法を改良した構造計算により圧力装置の形状を最適化する手法を確立した。この手法を用いて、QPT近傍における磁気エントロピー導出のための低温高圧下で磁化や熱膨張測定が可能な高圧発生装置、すなわち試料空間が大きく、且つ効率良く加圧できて、冷凍機に入る様な小型圧力発生装置を製作した。この装置を用いて、CeAl2および関連物質におけるQPT近傍の様々な物性測定を行い、様々なQPT相図を作成した。当該分野の研究は殆どの場合、QPT近傍で超伝導やスピングラス等、別の秩序状態が生じる。即ち、量子揺らぎが消失し、0 KではS=0に収束するので、厳密な意味のQCPではない。そのような中、QCP付近で50mKまで何の秩序も無いCeAl2は特異である。このまま0 Kまで何も無ければ、そこは0 Kまで量子揺らぎが残る、本当の意味でのQCPである。そこで現在は本研究で開発した技術を活用してCeAl2のQPT近傍における超低温電子物性の測定が進行中である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
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