研究課題
一次元と二次元の間の次元クロスオーバー領域にあるπd複合系として、ヨウ素結合型πd系(DIETSe)2MBr4xCl4(1-x)の開発と、低温・高圧・強磁場・高電場などの複合環境下での詳細な物性測定を行った。Clをより大きなイオン半径を持つBrに置換していくとd電子の反強磁性転移温度が上昇するとともにπ電子のスピン密度波転移が徐々に抑制された。後者は、通常の化学圧力効果とは逆の振る舞いであり、ハロゲン結合が関与した特異な超分子的構造の結果であることが構造と物性の関係から明らかになった。特筆すべきは、全組成域で同形構造の結晶が得られたことであり、強固なヨウ素結合による構造の安定化を利用して、π電子系の次元性、πd相互作用の大きさ、磁気異方性を系統的に制御することに成功した。(DIETSe)2FeBr2Cl2塩は低温でスピンフロップ転移磁場の大きなシフトに伴って磁性と伝導性にヒステリシスが現れる。物理的な圧力を印加してπ電子のスピン密度波転移を抑制するとヒステリシスが大きく抑制されることを見出した。このことは、磁性アニオンのハロゲンを置換したことによるランダムな磁気的相互作用に加えて、スピン密度波の共存が磁性と伝導性のヒステリシスに重要な役割を果たしていることを示しており、スピン密度波の持つガラス的な性質とランダムな磁気的相互作用の協同効果と考えられる。35Tまでの強磁場下での磁気抵抗測定などにより磁場誘起スピン密度波転移を系統的に調べた。混晶試料によりπd相互作用の大きさを系統的に変化させても、磁場誘起スピン密度波相の臨界磁場には大きな影響は無いが、反強磁性相が成長すると磁場誘起相と拮抗する特異な相図が得られることが分かった。
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