研究課題
鉄系122型Ca1-xRExFe2As2 (RE = La, Ce, Pr, Nd)では、RE = Laの場合に臨界温度Tc = 43 Kの超伝導が発現するが、超伝導体積分率は極めて小さく数%程度であった。研究代表者は、この化合物に対して少量のPをドープ(LaとPのコドープ)すると超伝導体積分率が著しく上昇し、超伝導がバルク化することを見出した。観測されたTcは、鉄系122型の最高のTcであったBa1-xKxFe2As2の38 Kを遥かに越える。平成26年度は、上記化合物の構造解析を行い、LaとPのコドープにより超伝導がバルク化する構造的な要因を調べた。その結果、Ca1-xLaxFe2(As1-yPy)2の構造が、低温において高温正方晶から格子コラプス相(低温正方相)へクロスオーバー的に変化することを見出した。一般に、122型で見られる格子コラプス転移は一次相転移であり、転移と共に超伝導が消失することが知られていた。これは、格子コラプス転移に伴ってc軸長が10%程度減少し、フェルミ面が3次元的になるためと考えられている。一方、本研究では、そのような相にクロスオーバー的に移行すると、逆に高いTcを示すことが明らかになった。この結果は、高温正方晶と格子コラプス相の間の構造揺らぎが、この化合物の超伝導発現に重要な役割を果たしていることを示唆する。さらに、格子コラプス転移の駆動力がFeAs面間のAs3-による(As2)4-分子の形成であることを考慮すると、この系の構造揺らぎは自然に電荷揺らぎを導く。そのような高エネルギーの揺らぎが高いTcの超伝導を媒介しても良いと考えられる。平成26年度は、さらに、コドープが他の系(鉄系112型)のTc上昇に対しても有効であることを示した。今後、様々な化学種のコドーピング効果を調べ、普遍性を検証する予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度の研究計画は、高いTcを生じる構造的な要因を明らかにすることであった。研究実績の概要に記載した通り、当初の計画通りに進んでいる。平成26年度は、さらに、コドープによってTcが上昇する他の系を見出した。これは、平成27年度の研究計画に含まれる。したがって、本計画は当初の計画以上に進展していると判断できる。
(1) コドープして得られた高Tc超伝導体の超伝導物性を評価する。(2) 鉄系122型CaFe2As2以外の化合物へコドープの研究を展開させる。平成26年度新たにコドープの有効性が示された鉄系112型超伝導体において、Tcの向上とその要因の調査に取り組む。さらに、コドープが有効に機能する他の超伝導体を探索する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (17件) (うち査読あり 17件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Journal of the Physical Society of Japan
巻: 84 ページ: 024706 (1-6)
10.7566/JPSJ.84.024706
Physical Review Letters
巻: 114 ページ: 056402 (1-5)
10.1103/PhysRevLett.114.056402
Physical Review B
巻: 91 ページ: 060510(R) (1-5)
10.1103/PhysRevB.91.060510
巻: 89 ページ: 140504(R) (1-4)
10.1103/PhysRevB.89.140504
巻: 83 ページ: 054601 (1-5)
10.7566/JPSJ.83.054601
Journal of Electronic Materials
巻: 43 ページ: 1656-1661
10.1007/s11664-013-2823-5
巻: 83 ページ: 064713 (1-7)
10.7566/JPSJ.83.064713
JPS Conference Proceedings
巻: 3 ページ: 016015 (1-5)
10.7566/JPSCP.3.016015
巻: 89 ページ: 220508(R) (1-4)
10.1103/PhysRevB.89.220508
巻: 90 ページ: 081104(R) (1-5)
10.1103/PhysRevB.90.081104
巻: 83 ページ: 093705 (1-4)
10.7566/JPSJ.83.093705
巻: 83 ページ: 093706 (1-5)
10.7566/JPSJ.83.093706
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 26 ページ: 375702 (1-6)
10.1088/0953-8984/26/37/375702
巻: 90 ページ: 094508 (1-6)
10.1103/PhysRevB.90.094508
巻: 83 ページ: 113707 (1-5)
10.7566/JPSJ.83.113707
巻: 90 ページ: 144515 (1-5)
10.1103/PhysRevB.90.144515
巻: 90 ページ: 224513 (1-5)
10.1103/PhysRevB.90.224513
http://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id3444.html