研究実績の概要 |
鉄系122型を対象として開始した本研究を、他の系(鉄系112型)に発展させることができた。 鉄系超伝導体の新しい型である112型の化合物Ca1-xRExFeAs2 (RE = 希土類元素) は、単斜晶の結晶構造を持ち、FeAs層とAsジグザグ鎖の交互積層からなる。超伝導転移温度 Tc は RE = Laのとき35 K、RE = Pr, Nd, Sm, Eu, Gdのとき10-15 K である。RE = Ceのときは超伝導を示さない。 平成27年度は、112型 Ca1-xRExFeAs2 (RE = La, Ce, Pr, Nd) に Sb をコドープして負の化学圧力を印加すると、超伝導が著しく増強されることを明らかにした。Ca1-xLaxFeAs2 に Sb をコドープすると、Tc が 47 Kまで上昇した。この Tc は、鉄系 1111 型に次いで 2 番目に高い値である。Sb コドープの効果は RE = Ce, Pr, Nd の場合にも現れ、Sb をコドープした Ca1-xRExFeAs2 (RE = Ce, Pr, Nd) は Tc = 43 Kを示した。112 型では、a 軸方向の As-Fe-As 結合角が最適値とほぼ一致する一方で、b軸方向の結合角が最適値よりも小さい。単結晶構造解析の結果から、 Sb をドープすると b 軸長が伸び、b軸方向の結合角が最適値に近づくことが分かった。b 軸長を a 軸長と同程度の長さまで伸ばすことができれば、112型超伝導体の Tc は 50 Kを越えるかもしれない。
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