電場誘起表面超伝導はバルクの超伝導とは異なる特性を持つ。このことを具体的に明らかにするため、また、表面超伝導の物性の定量的理論評価を可能とするため、この系の局所電子状態と物性について微視的理論計算手法の開発に取組んできた。これまで、Bogoliubov-de Gennes方程式を数値的に解くことにより、表面付近に束縛された電荷分布や超伝導秩序変数の局所的な空間構造を決め、局所電子状態密度を計算することにより超伝導ギャップ構造の空間変化などを評価する手法を発展させ研究を進めてきた。 この表面超伝導の特徴の一つは、電子が表面での束縛ポテンシャルに閉じ込められることにより離散的なエネルギー準位を持つサブバンドが形成されることである。このサブバンド構造が反映する物理現象として、表面に平行に磁場をかけた場合の電子状態についての計算を進め、物理量の磁場依存性について理論評価を行った。まずは、Bogoliubov-de Gennes方程式による表面超伝導の計算において、磁場によるゼーマン効果を考慮し常磁性対破壊効果を理論評価した。そこで磁場とともに超伝導が抑制され一次転移で超伝導が消失する過程において、サブバンド毎に電子状態が正常相に転移する磁場があり,磁場の上昇とともに高次のサブバンドから順に段階的に正常相へと転移していくことがわかった。さらに、常磁性対破壊に加え、反磁性対破壊効果を考慮した研究も進めた。そこでは、ベクトルポテンシャルを導入して反磁性電流の空間構造を計算し、反磁性電流による対破壊効果や物理量への影響を理論評価した。これらの結果により、超伝導秩序変数の振幅やゼロエネルギー状態密度、常磁性磁化などの物理量の磁場依存性において、サブバンドによる多バンド超伝導の反映がはっきりと表れることや、常磁性と反磁性の対破壊の役割を理論的に明らかにすることができた。
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