研究課題
本研究では,Yb化合物の磁気フラストレーションを圧力によって制御し,その際に出現する量子臨界点(QCP)での超伝導や非フェルミ液体的挙動を探索し,それらに対する磁気フラストレーションの影響を明確にすることを目的とする。試料として取上げた擬カゴメ格子系YbAgGeは常圧下で二段の磁気転移をTM1=0.8 KとTM2=0.65 Kで示す。最近,我々は第二のQCPがPC2=16 GPa付近にあることを見出した。そこで,その第二QCPでの圧力誘起超伝導や特異な臨界現象出現の可能性を探る。平成27年度では,比熱の上限圧力を20 GPaまで引き上げるため,装置を改良した。比熱測定に用いるアンビル先端直径をこれまでの3㎜から2.4㎜に小さくし,アンビル先端に施した窪みの形状を改良した。その結果,10GPaまでの圧力下で比熱の絶対値を0.5Kから10Kの温度範囲で測定することに成功した。関連するYb化合物の研究として,平成27年度はTN=4.2Kで反強磁性転移する三角格子系YbCuGeの磁気フラストレーション効果の影響を探るため,0.3 GPaまでの一軸圧力下における磁化と比熱の測定を行った。その結果,静水圧下および三角格子が歪まない六方晶のc軸方向に加圧した場合では,TNは全く変化しなかったが,三角格子が変形するa軸方向に0.15 GPaまで加圧した場合,TNは4.5 Kまで上昇した。また,このTNの上昇は比熱測定でも確かめられた。この結果は常圧下で既に磁気フラストレーションによってTNが抑制されていることを強く示唆する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 014703/1-6
10.7566/JPSJ.85.014703
Phys. Procedia
巻: 75 ページ: 511-515
10.1016/j.phpro.2015.12.064
高圧力の科学と技術
巻: 25 ページ: 283-291
月刊化学工業
巻: 66 ページ: 653-661
Phys. Status Solidi C
巻: 12 ページ: 620-623
10.1002/pssc.201400312
巻: 84 ページ: 063703/1-4
10.7566/JPSJ.84.063703