研究課題/領域番号 |
25400377
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田中 新 広島大学, 先端物質科学研究科, 助教 (70253052)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 軌道秩序 / 軟X線共鳴回折 / 遷移金属化合物 / 金属絶縁体転移 / 軌道縮退 |
研究概要 |
遷移金属化合物で軌道縮退の効果がその電子状態を理解する上で重要な物質について、その軌道、電荷、磁気状態等の情報がいかにして、遷移金属L2,3端における軟X線共鳴回折によって得られるかを議論した。この手法は3d遷移金属化合物の電子状態の詳細な情報を得るのに適しているが、3d軌道の軌道縮重度、原子内クーロン・交換相互作用、配位子の分子軌道との混成等を取り入れた精密なクラスターモデルを用い解析を行うことでその真価を発揮する。本研究では、マグネタイト、BaVS3について、軟X線共鳴回折の解析をクラスターモデルを用いて行い、その軌道、電荷、磁気秩序状態について議論した。 マグネタイトにおける金属-絶縁体転移の起源は、軌道および電荷の秩序化であると考えられているが、その発見から70年をへても未だに解決できない問題である。困難の主な理由は、絶縁体相の複雑な結晶構造と共に電子状態を直接的に捉えることが困難であったためであると考えられる。電子状態の詳細な情報を捉えることができる軟X線共鳴回折はこのような問題に適している。解析の結果、以前に提案した複素数軌道秩序の存在を仮定すれば、実験結果を良く説明できることが分かった。また、バンド理論で予測されていた実軌道秩序のいくつかは実験結果を説明できないことが明らかとなった。 BaVS3も、金属-絶縁体転移と低温相における秩序状態に興味が持たれている。この系では電子の遍歴性の効果を取り入れるため、複数の遷移金属サイトを含むようなクラスターを用いて解析を行った。また、単に軟X線共鳴回折の情報を用いるだけでなく、V L2,3端X線吸収の線二色性実験の結果と組み合わせることで、この系の低温相における軌道、電荷、磁気秩序の詳細について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複素数軌道の秩序について議論するためには、軌道縮退がある強相関電子系を扱える理論が必要であるが、その計算を行うプログラムの開発が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
軌道縮退がある強相関電子系を扱える理論として最近提案されている動的平均場近似を用いた計算を行うプログラムの開発を進め、これを用いて複素数軌道秩序について議論する。また、軌道縮退がある系での高エネルギー分光スペクトルの議論も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入したワークステーションの金額が、予定より低価格であったため。 国際会議への出張旅費、書籍および論文投稿費に使用する。
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