研究課題
前年度に引き続き、電子相関の強い系の電子状態を正確に記述できる方法であるDual Fermion法の計算を行うプログラムの開発を行った。本研究では、高エネルギー分光スペクトルの計算を行うことを目的としているため、系の基底状態を正しく記述するのみでなく、励起状態についても精度良く計算することが必要である。この目的のため、ほとんどの先行研究で用いられている連続時間モンテカルロ法でなく、ランチョス厳密対角化法を用いた計算手法を新たに考案した。軌道縮退のない系については、このランチョス厳密対角化法を用いたDual Fermion法のプログラムを完成させることができた。上記のプログラムを用いて、2次元1バンド・ハバードモデルについてhalf-fillingでの金属絶縁体転移を特にスペクトル関数との関連において議論し、さらに電子およびホールをドープした場合の擬ギャップ形成についても調べた。特にこの系の金属絶縁体転移については、先行研究と比べ正確なスペクトル関数を計算できるため、より詳しい議論をすることができた。また、大阪大学基礎工学研究科の関山明教授の実験グループと協力し、YbB12の角度分解Yb 3d内殻光電子分光スペクトルの線二色性の解析を行い、この系の4f軌道の基底状態の波動関数の対称性についての詳細な情報を得ることができた。この結果から、高エネルギーの入射光を用いた角度分解内殻光電子分光はdやf軌道の軌道偏極を調べる上で有力な手段となりうることが分かった。
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J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 84 ページ: 073705/1-4
10.7566/JPSJ.84.073705