研究課題/領域番号 |
25400378
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
奥田 哲治 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (20347082)
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研究分担者 |
齋藤 智彦 東京理科大学, 理学部, 教授 (30311129)
梶本 亮一 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (30391254)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 酸化物半導体 / Jahn-Teller歪 / フラストレーション / 光電子分光 / 非弾性中性子散乱 / 電界ドーピング |
研究概要 |
本年度は、n型熱電材料候補である電子ドープSrTiO3の元素置換による熱電特性の改善及び、p型熱電材料候補であるホールドープCuCrO2の基礎物性研究を推進した。 先行研究により、電子ドープSrTiO3の熱電特性において、TiサイトMn置換が電気抵抗率の大幅な増加なしに、熱伝導率の大幅な低減と熱起電力の増大を引き起こし、室温付近の熱電特性を大幅に改善することを見出している。本年度は、Mn置換による熱電特性の変化の系統性と、幾つかの基礎物性の系統性を調べた。それにより、電子ドープSrTiO3のTiサイトに置換されたMnイオンはJahn-Teller活性な三価のイオンであることが明らかとなり、このイオンによりもたらされる局所歪が大幅な熱伝導率の低減の起源となっている可能性があることが分かった。 CuCrO2の基礎研究では、分担者との共同研究により、詳細な電子構造評価を行った。これにより、他のデラフォサイト型銅酸化物と比較して、CuCrO2がCrサイトMg置換により優れた電気伝導性を示すのは、O 2p軌道を介したCr 3d軌道とCu 3d軌道の混成によることが明瞭となった。また、低温磁気比熱の詳細な解析により、ホールドープCuCrO2の低温での磁気比熱の振る舞いが、等価数置換で見出されている二次元のdiffusiveな磁気励起の出現と、ホールドープ効果による三次元の磁気励起の抑制の競合で説明できることを見出した。 本年度は、さらに、熱電材料探索及び物性探索手法の一つとして、電界ドーピング手法の開発を行い、手始めにアナターゼ型TiO2薄膜への電界による電子ドーピングを行い、絶縁体・金属転移を確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題では、優れた熱電材料を創生するための新たな道筋を探るために、プロトタイプとなる幾つかの代表的な酸化物熱電材料を舞台として、その熱電特性改善のための新たな試みや、それに付随する未知物性の探索や解明を行うことが重要な目的となっている。 本年度は、特に、熱電材料として重要であるSrTiO3において、Mn置換による大幅な熱電特性の改善の起源に迫れた点で大きな進展があった。また、光電子分光によりホールドープCuCrO2の電子構造を明らかにすることで、この系の優れた電気伝導性の起源に迫れた点や、詳細な解析により未解明であったホールドープCuCrO2の低温磁気比熱の振る舞いを解明したことも大きな進展であった。
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今後の研究の推進方策 |
電子ドープSrTiO3の熱電特性におけるMn置換効果においては、その効果の起源の探索のために非弾性中性子散乱実験によるフォノン励起の測定、詳細な比熱・磁気測定などをさらに行い、明らかになりつつあるMn置換効果の起源を完全に解明する予定である。 ホールドープCuCrO2においては、単結晶試料を用いた角度分解能光電子分光により、電子構造を解明し、比較的大きな熱起電力の起源を解明する予定である。また、sol gel法により合成した多結晶薄膜を用いて電界効果トランジスタを作成し、電界効果ドーピングにより、CuCrO2の磁気転移近傍の磁性の特異なホールドーピング依存の起源を解明する予定である。 これら既存物質での熱電特性の改善、起源解明、基礎物性研究に加えて、類縁物質での新たな熱電材料の探索も精力的に実施していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年3月に予定していたアメリカ物理学会への参加を、緊急の学事のためにキャンセルしたことにより、次年度使用額が生じた。 次年度使用額の一部(10万円)は、最近に故障した装置(X線回折装置)の修理費に充てる予定である。残額(約18.8万円)は、実験消耗品等の物品費に用いる予定である。
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