研究課題/領域番号 |
25400382
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高野 良紀 日本大学, 理工学部, 教授 (30171466)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超伝導 / リチウムイオン二次電池 / リチウム硼炭化物 |
研究実績の概要 |
リチウム硼炭化物LixBCは、Rosnerらにより、Li量の制御しキャリアドープが可能になれば、100K近い超伝導転移温度を示す可能性があると理論的に予想されている。また、そのLi量の制御を電気化学的に行うことができれば、リチウムイオン二次電池の電極材料の可能性も出てくる。特に、軽元素から構成されている本物質で、高効率化が可能になれば、二次電池の軽量化に繋がる可能性がある。 電気化学的にLi量を制御できることはこれまでの申請者の研究によりわかっているが、ウエットプロセスで作成した試料を取り出して物性評価するには、現段階でも成功していない。そのため、従来の固体反応法により作成し、混合や加圧成型の効果を調べている。仕母体試料作成後、Liゲッタリングを用いた熱処理の中間段階に混合加圧成型を加えた試料で両者を同時に観測することができるようになり、再現性の向上を試みたが、改善に至っていない。 LixBC単体は充放電のサイクル安定性が高いが、初期充電容量や放電容量が少ない。そこで、Siとのコンポジット化を行っている。これにより充電容量・放電容量は増加したが、ほぼすべてのコンポジット試料で、Siの充放電時の体積変化による基板からの剥離が原因と考えられる放電容量の落ち込みが見られた。LiBCとSiの重量比が7:3でメカニカル・ミリングで作成した試料は優れたサイクル特性を示した。しかし、同じ調合比でも、乳鉢で混合した試料は、放電容量は大きいもののサイクル安定性が乏しかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新超伝導物質探索としては、電気抵抗の異常と反磁性が同一の試料で観測されたのは1つの進歩であるが、再現性に乏しいのが今後の課題になる。また、ウエットプロセスでLi量を制御した試料を大気に触れさせず、物性評価を行う方法を考える必要がある。 リチウムイオン二次電池の電極材料の可能性としては、シリコンとのコンポジット化により、母体試料自身の持つサイクル安定性を大きく減少させることなく、大きな初期充電容量および初期放電容量を実現した。しかし、Siの充放電時の体積変化による基板からの剥離が見られるなどの新たな問題点も出てきた。また、Siとの調製比や調整方法により充放電容量やサイクル特性・クーロン効率に差が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
物質探索および電極応用ともに、母体物質としては仕込みLi量1.25で作成したものに限定する。 物質探索では、熱処理時間を長くすると、試料からのLiの抜けが多くなるため、(900℃、75時間熱処理)+(中間混合・加圧成型)+(900℃、37時間熱処理)の作成条件をもとに、合計の熱処理時間は変化させずに、中間混合・加圧成型プロセスの回数を変化させ、一様な反応が促進するようにする。 電極応用では、LiBCとSiの重量比が5:5の試料は実用化されている電極材料よりも2倍程度高いが、サイクル特性が悪いため、初期放電容量は低いがサイクル特性のよい重量比7:3付近の組成に着目し、調合方法をメカニカル・ミリングに限定して特性評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料作成用の原材料として利用したが、学内の経常費でまかなった部分が多い。謝金については実験補助に予定していた大学院生が、学内のティーチングアシスタントになり、本研究費と兼任することができなかったため、使用しなかった。旅費に関しては、個人的な理由であるが、体調の問題で連泊が難しかったため、使用できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
Li量を制御した試料については、完全には抑えられていないが、試料の一様性、欠損量については明らかになってきたので、今後の方針に従い、超伝導の探索ならびにコンポジット試料の作成と評価を進める。大学のシステムが変わり、ティーチングアシスタントとの兼務が可能になること、新たな大学院生が加わったため、謝金を利用して、実験補助を行ってもらう。体調も快復傾向であるので、積極的に学会発表を行う。
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