研究課題/領域番号 |
25400384
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
宇治 進也 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, ユニット長 (80344430)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スピン / 反強磁性 / 磁気トルク / 層状有機導体 |
研究概要 |
層状有機導体において、微小な単結晶一つでもスピン状態を詳細に調べる手法として、マイクロキャンティレバー法があげられる。これまで、たとえスピンが反強磁性状態にある場合、磁気トルクを測定した時にどのような情報を得られるか、その解析手段はごく限られた条件でのみ適用でき、汎用性はなかった。そこで、有機伝導体-(BDH-TTP)2FeX4 (X = Br, Cl) に注目し、詳細な磁気トルク測定を行い、合わせて数値計算による解析手法を発展させた。この系はFeスピンが大きな磁気モーメント(S=5/2)を持ち、低温で反強磁性秩序化することが知られている。この反強磁モーメントが2つの副格子で記述できると仮定した。さらに1軸の磁気異方性(D)と交換相互作用(J)をパラメーターとして、磁場中での磁化およびトルクを数値計算した。 まずFeBr4塩では、磁化容易軸がa軸で、D=0.26 K, J=1.02 Kである時、最も良く実験結果を再現できることが判明した。D<<Jであることから、磁場中での磁気モーメントの転移はスピンフロップ転移である。一方、FeCl4塩では、D=0.14 K, J=0.07 Kであり、メタ磁性転移を起こすことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロキャンティレバー法を用いると、分子性有機結晶のような微小な単結晶一つでも、精密に磁気トルクを計測できるが、これまでその解析手法が確立していなかった。本年の研究により汎用性の高い解析手法が確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
いくつかの層状有機導体では、モット絶縁体であり,かつ三角格子上にスピン(S=1/2)が局在している。そのような系ではスピン液体状態が実現していると考えられているが、極低温領域まで、磁性の精密測定結果はほとんど報告されていない。今後は、スピン液体状態が実現していると期待される候補物質の詳細な磁性測定を進める。さらにすでにスピン液体状態が実現していると指摘されているBEDT-TTF塩に圧力を印加し、スピン液体状態がどのように壊れフェルミ液体状態に変化するのか、抵抗測定で調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要な消耗品を年度内に納入することができなかった。 必要な消耗品として利用予定である。
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