研究課題/領域番号 |
25400386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
立岩 尚之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (50346821)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高圧実験 / ウラン化合物 |
研究概要 |
本採択申請では、ウラン化合物における圧力誘起型相転移とそれに伴う電子基底状態の変化について、磁性と超伝導という観点から研究を計画する。 1. ウラン化合物の場合、通常のピストンシリンダー型圧力セルで到達できない3 GPa(万気圧)を越える圧力で相転移を示す物質が多い。まず多目的型高圧下物性測定用圧力セルの開発を行った。ブリッジマン型圧力セルを基本として、ガスケット・アンビルの適正化を行い、諸問題の解決に向けて目処を立てる事ができた。テスト測定としてウラン反強磁性体URhIn5の反強磁性転移温度の圧力効果を4GPaまで決定した。さらに高圧下磁化測定を目的とした圧力セルについても、その仕様を再検討し、バックグラウンドを大幅に低減させ、測定精度の向上を計ることもできた。 2. ウラン強磁性超伝導物質UGe2, URhGeの高圧下磁化測定を行い、強磁性秩序相境界の磁性状態の変化を調べた。また、常圧の強磁性転移に伴う臨界現象を詳細に調べた結果、既知のいかなるユニバーサルクラスに属さない新奇なタイプであることを明らかにした。これまで、ウラン強磁性超伝導物質の強磁性状態は、一軸型磁気異方性が強く三次元イジング型と捉えられてきた経緯があるが、必ずしもこれは適切でなくイジング型強磁性状態では説明できない磁気相関の存在を示唆し、超伝導出現機構との関係が興味深い。 さらにウラン系磁性半導体US2, USeSの強磁性相境界に現れる巨大磁気抵抗に興味を持ち、磁気転移温度の圧力効果を調査中である。 3. 高圧下磁化測定用圧力セルの性能テストとして、希土類化合物YbCu2Si2の圧力誘起強磁性相について直流磁化測定を行った。自発磁化や強磁性転移温度の圧力依存や、非常に一軸異方性の強い強磁性状態を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究業績の概要」に記述した通り、ウラン化合物の圧力誘起相転移の研究には、超高圧領域における物性測定技術の確立が必要である。例えば、本採択申請の一つのターゲットであるウラン系超伝導物質UBe13は4GPa前後で一次相転移を示す。まず技術開発を行った。 1. 平成25年度は、ブリッジマン型圧力セルを用いた測定技術の試行錯誤を行い、超高圧領域における精密物性測定技術の方法論を確立させることができた。アンビルに溝を形成し物性測定用電極線の導入が可能になった。この実験条件の適正化により、ウラン化合物における圧力誘起型相転移と、それに伴う電子基底状態の変化について研究が可能になった。また、交流磁化率測定を目的とした、超小型圧力セルの準備も終了した。さらに、高圧下磁化測定用圧力セルの測定精度の向上化により精密物性研究が可能となり、ウラン系化合物における圧力誘起型電子基底状態のスイッチング機構について、磁性の観点から多くの情報が得られると期待される。 2. 強磁性超伝導物質UGe2, URhGeの新奇な臨界現象の発見により、ウラン系強磁性超伝導物質の圧力誘起相転移の探求に大きな指針が得られた。特にウラン5f電子の特異性が反映された新奇な物性の解明とその機構探求に向けた指針が得られたと言える。また、ウランカルコゲナイド化合物の金属絶縁体転移に伴う強磁性状態の出現はウラン5f電子系電子基底状態スイッチング現象の新奇な例として興味深く、その機構と巨大磁気抵抗効果の相関について今後の研究の発展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度以降の研究計画を以下箇条書きで記す。 1. ウラン系超伝導物質UBe13は4GPa前後で一次相転移を示す。しかし、その詳細はまだ良くわかっていない。高圧下磁化/比熱/電気抵抗測定を行い、超伝導相図等を完成させ、大きな残留抵抗で特徴付けられる低圧側の「異常な金属状態」と非従来型超伝導の関係を明らかにする。また、超高圧領域の電子状態の磁気的特性を明らかにする予定です。 2. 強磁性超伝導物質UGe2, URhGeの強磁性状態の圧力効果を調べる。特に「スピンのゆらぎ特性温度」の圧力変化と、電子基底状態の相転移との関係を調べる。特に超伝導との相関を明らかにし、「スピンの揺らぎ」起源の他の非従来型超伝導との比較を行う。 3. ウランカルコゲナイド化合物の高圧下電気抵抗測定を磁場中で行い、強磁性相境界で現れる巨大磁気抵抗の圧力効果を調べる。
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