研究課題/領域番号 |
25400388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
福井 隆裕 茨城大学, 理学部, 教授 (10322009)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導体 / 超格子 / チャーン数 / ベリー位相 |
研究概要 |
交付申請書の研究実施計画に記したように、25年度は「超格子」トポロジカル絶縁体・超伝導体の研究を主に行った。まず最初に超格子系のトポロジカル相の新概念を確立するために、2次元の量子ホール系において、単独では異なるトポロジカル相を層状に配置した模型を提案し、その新奇なトポロジカル相を詳細に調べた。 最初に、具体的な模型としては、格子ゲージ理論で用いられるWilson-Dirac模型(Dirac fermionを格子上に定義した模型)の質量を層状に配置することによって、言わば異なるチャーン数0,1,-1を層状に配置した模型を調べた。特にチャーン数1,-1を層状に配置し、その結果全体のチャーン数が0となる状況において、非自明な新奇な相が現れることが分かった。すなわち、全チャーン数が0は通常では自明な絶縁体を意味するが、境界に沿って局在した所謂エッジ状態が現れることが分かった。バルク・エッジ対応により、通常ではバルクのチャーン数0ならば、エッジ状態も0個となるはずである。 この新奇な相をどのように特徴付ければ良いのか。これが本研究で最も時間を費やし苦労した点である。結論は、チャーン数と共に、ベリーの位相によってこのエッジ状態が特徴付けられることを示した。 次により多様な模型を用いて、同様のトポロジカル相、すなわちチャーン数0であるにもかかわらず非自明なエッジ状態の存在する相が実現するか否かを調べた。具体的には、必ずしも層状物質ではないような非等方的Wislon-Dirac模型などである。その結果、このような相の実現には、必ずしも層状であることは必要でなく、より一般的な現象であることが理解された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的は大きく2つに分けて「トポロジカル不変量の数値計算アルゴリズムの開発」と「一般的なトポロジカル場の理論の構築」である。 この中で25年度は「2次元の超格子系のトポロジカル絶縁体の研究」に焦点を絞り、この研究を通して前者の研究を発展させることができた。すなわち、超格子系の新しいトポロジカルな性質を、ベリー位相の量子化、という観点で明らかにすることができた。ベリー位相の数値計算も精度良く行うことができた。論文は1本を既に発表し、今現在、本論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の研究で2次元の超格子系に関する研究は一応の完成を見たため、この後は3次元の超格子系の研究を継続して行っていく。特に3次元系では実際に超格子系の実験が行われているから極めて興味深いトピックである。最初はバンド絶縁体から研究を開始するが、相互作用を導入することによって、新しい表面状態、すなわち、対称性を保った上でのギャップを持った表面状態の研究も難問ではあるが是非行いたい。 また、2次元超格子系の研究を通じて、関連した新しい次の課題にも取り組みたい。これまでのトポロジカル相の分類理論によると、対称性の無い一般的な1次元系は、トポロジカルには自明であるが、実は隠れた非自明なトポロジカル相の可能性があることが分かった。更に3次元の時間反転対称な系(いわゆる量子スピンホール系)でも同様なことが起こりそうである。まだ漠然としている点もあるが、関連した新しい課題として取り組んでいく。
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次年度の研究費の使用計画 |
主要研究課題の2次元超格子系のトポロジカルな性質がなかなか理解できなくて、概念の整理とそれを特徴付けるトポロジカル不変量の発見に大きく時間を費やした。その結果、大規模な数値計算を行う以前の研究時間が長くなり、数値計算サーバーの必要性が高くなかった。 また、数値計算サーバーとして購入予定であったMacProが、モデル変更となり長い間発売されなかったのも理由の一つである(2014年2月にようやく発売された)。 数値計算サーバーを導入して計算を行う予定である。また、Mathematicaの新しいバージョンも近々発売されるので購入する予定である。
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