研究課題/領域番号 |
25400389
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
飛田 和男 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20133704)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ダイヤモンド鎖 / 厳密解 / フラストレーション / 数値対角化 / 密度行列繰り込み群 / 基底状態相図 / 異方性 / 混合スピン |
研究実績の概要 |
スピン1と1/2からなる異方的反強磁性混合スピンダイヤモンド鎖XXZモデルでは、等方的な場合やスピン1のみに異方性がある場合と同様、基底状態は、強いフラストレーションにかかわらず厳密に求められ、有限長のクラスタとその間にあるスピン1/22つからなるダイマーの基底状態の直積として与えられる。それぞれのクラスタは異方性が交替する長さ奇数長の開放端S=1反強磁性鎖とみなせる。実際に基底状態を与えるクラスタ長は系のパラメータにより異なる。基底状態の主な特徴は以下の通りである。 1. クラスタの基底状態はクラスタの全スピンのz成分が±1と0の場合があり、前者の場合系全体は常磁性、後者の場合非磁性である。 2. 一般にクラスタ長があまり大きい相は存在せず、比較的小さいクラスタからなる相から、一挙に全系にわたるクラスタからなる相に転移する。 3. 全系にわたるクラスタからなる相は代表者が以前研究した異方性が交替する無限長S=1反強磁性鎖の基底状態と同等であり、Haldane相、large-D相、倍周期ネール相、通常のネール相に分けられる。 従って、比較的小さな系の対角化によりクラスタの基底エネルギーを求め、無限サイズ密度行列繰り込み群で異方性が交替する無限長S=1反強磁性鎖の単位胞当たりの基底エネルギーを求めることにより基底状態相図を描くことができた。このモデルは、当初研究計画にあったスピン1/2桁交替梯子系に異方性を導入したモデルの一つの極限に対応しており、利根川らによる異方的スピン1/2桁交替梯子系についての研究結果との対応関係も明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初研究計画では等方的スピン1/2強磁性・反強磁性桁交替梯子系の研究も進める予定であったが、この系については、強磁性相近傍の非磁性相について結論を出すには十分な計算結果を得ることができなかった。このため、現時点では論文として公表に至っていない。代わって、上記の通り、このモデルに異方性を導入したモデルの一つの極限であるスピン1と1/2からなる異方的反強磁性混合スピンダイヤモンド鎖XXZモデルについて厳密解を元に成果を得た。また、強磁性脚・強磁性桁で対角ボンドが反強磁性のスピン1/2梯子系について、エンタングルメントスペクトルによる相の特徴付けやネマティック相の存在の可能性についても研究を進め、口頭発表を行っている。従って、多少の方針変更はあるものの、当初計画になかった研究も進んでいるので、このように評価する。
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今後の研究の推進方策 |
強磁性脚・強磁性桁で対角ボンドが反強磁性のスピン1/2梯子系について、対角ボンドの非対称性がごく小さい場合と、片方が0で非対称性が非常に大きい場合の二つの領域で基底状態相図をを調べたところ、非常に異なった相図が得られている。そこで、より広いパラメータ領域で研究を進め、基底状態相図の全貌を明らかにしたい。 また、この系については、パラメータ領域によっては、相境界の判定に用いる物理量の選択によって数値的に大きく異なる相境界が得られることがあり、このことの物理的原因と相境界の決定に適切な物理量の選択基準を明らかにしたい。 さらに、桁交替梯子系の研究動機の一つとなったランダム桁の梯子系において、ランダム性を積極的に利用した実空間繰り込みによる計算を試みる事も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた論文投稿費用は他の資金(運営費交付金)から支出できたため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度予算に追加して導入する計算サーバーをより高性能の物にする。
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