研究課題/領域番号 |
25400390
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
櫻井 建成 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60353322)
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研究分担者 |
辻川 亨 宮崎大学, 工学部, 教授 (10258288)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非平衡開放系 / 非線形科学 / 結合振動子系 / 数理物理 |
研究概要 |
本研究では、真性粘菌というモデル生物を例に取り上げ、ニューラルネット網と脳内血管網との相互作用によるエネルギー供給の最適化とそのメカニズムにアプローチすることを目的としている。真性粘菌は、その管の中には、原形質の流動がある。また、境界を通して餌の位置が与えられれば、最適な管状ネットワークを再構築することが知られている。本年度は、時間・空間的外部環境の変化による真性粘菌ネットワーク構造と単一の非線形振動子としての引き込み現象の特徴を明らかにした。具体的には、本来真性粘菌は、嫌光性を示すことが知られており、真性粘菌に光を照射した場合、エサ間を最短距離で結ぶことはない。しかしながら、真性粘菌ネットワークの一部に周期90秒と180秒で変動する光を照射した場合、真性粘菌の管がエサ間を最短距離で結ぶことが実験的に明らかになった。更に、10%程度ではあるが、好光性を示す場合もあった。このことは、非線形振動子の引き込み現象で理解できると考え、微小な真性粘菌(単一の非線形振動子とみなせる)による光感受に対する実験を行った。具体的には、周期 T 秒、振幅 A lxで時間変化する光強度を持つ外部摂動に対する真性粘菌の応答性を調べた。そこでは、90秒程度の周期を持つ光を照射した場合に、真性粘菌の振動現象に対して引き込み現象が観測された。これらの知見は、真性粘菌管状ネットワ ーク、更には複数要素間ネットワークの最適化問題に繋がることが期待される。次年度以降に更に詳細な実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、真性粘菌ネットワークに光フィードバック機構を加えた実験系による実験結果を基に、2層構造脳内血流量モデルを提案する予定であった。しかしながら、本年度は微小な真性粘菌(単一の非線形振動子)の光応答性の実験を集中的に行ったため、現象論的な2層構造脳内血流量モデルの提案には至らなかった。しかしながら、平成26年度以降に予定していた非線形素子を用いた電気回路網の製作を一部行った。研究期間全体を通した達成度は概ね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に制作した非線形素子を用いた電気回路網の拡張を行う。具体的には、真性粘菌細胞(ニューロンに相当)として、無安定(もしくは単安定)マルチバイ ブレーターを用いた非線形電子回路要素と原形質流動(脳内血流)を電流とした多節点系の電気回路網における電子回路網を提案する。特に各回路網の節点において相互作用項を入れることにより、ニューラルネットワークと血流量モデルと等価な2層構造脳内血流量モデルを構築する。 更に、化学ポテンシャルに時間変動する外力場が存在するときの相互作用エネルギーを考慮した付加項を導入し、内部エネルギーの生成消滅項を考えた電気回路網モデルを構築したエントロピー生成の定義を新たに提案する。ネットワーク網の最適化問題に対してエントロピー生成量を用いた新しい安定性解析手法の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は実験実施に集中し、学会発表等の成果発表は控えたため旅費が少なくなった。平成26年度は、平成25年度の実験結果および平成26年度実施の成果等を積極的に発表し議論するための予算を計上する。また、真性粘菌の培養等の補助者のため謝金を計上していたが、本年度は研究代表者自身で培養等を行った。しかしながら、今後更なる培養や電子回路網の実現に対して補助者が必要になることが考えられる。平成26年度に当初予定していた額以上の謝金を計上したい。 旅費として、498,354円を使用予定です。また謝金として、300,000円を使用予定である。
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