研究課題/領域番号 |
25400394
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 政行 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (00266925)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 非線形局在励起 / ソリトン / MEMS |
研究実績の概要 |
格子中に生成する非線形局在励起と呼ばれるエネルギー局在の移動や走行について調べることを目標にしている。 1. 移動現象については、マイクロカンチレバーアレイ中での局在について実験とシミュレーションにて進展があった。移動時には非線形の局在励起以外に、それが作り出す線形の局所ノーマルモードが強く関係することは示唆されていた。レーザーのスポット照射により局所的にバネ定数を変化させることができる。赤外レーザーではカンチレバーが柔らかくなることは知られていたが、可視レーザーではわずかに堅くなることが新たに見出され、これを用いて局在励起の移動作用を反発、吸引両方とも同じ試料で研究できるようになった。このとき、線形応答スペクトルでは移動に関係する局所モードがパラメトリックに励起され、非線形局在の振動と懇請した結果、移動するという機構が解明された。 2. 走行現象に関しては、一般の非可積分格子中をソリトンのように減衰なしで走行するメカニズムが考えられた。格子中を局在励起が走行すると、テイルと呼ばれる励起を生じる。非線形力が不必要な線形のノーマルモードを励起していることが原因である。非線形力のフーリエ変換を行うことでテイルの発生を予測できるので、非線形モデルの調整でテイルの発生を抑えることができる。この成果は学会で発表された。また、現在論文投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 局在励起の移動現象を吸引、反発両方ともに同じ資料で実験ができ、詳細に移動時の線形応答スペクトルの変化が測定できた。シミュレーションもほぼ同じ変化を示し、実験結果を支持している。これらの結果は論文に投稿し発表されている。これは評価に値すると思われる。 2. 一般的な格子はすべて非可積分であり、ソリトンのようなエネルギー局在の走行はできないと言われている。このため、非可積分格子で安定走行を可能にする技術は興味を持たれている。過飽和非線形性、非線形局在と線形局所モードの安定性交代、平行移動の対称性を持たせる、等の方法が提唱されて来た。我々の方法は非線形力をフーリエ変換し、相互作用を可視化すること、基本的な2つの非線形要素だけを用いている点で、他の例よりシンプルで実験的に実現しやすい。これは評価に値すると思われる。これらの結果は学会で発表された。現在投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
1. (1)ソリトンのように走行する非線形モデルの構築には走行速度と局在幅の情報が必要である。これらの情報があれば、近似的に変位を見積もることができ、それから非線形力を計算することができる。相互作用する波数位置が知られるので、相互作用によるテイルの有無が容易に判断できる。そのことより、モデルパラメーターをどのように変化させればよいかが知られる。 (2)局在幅については、ある限られたモデルの範囲で走行時において非線形モデルにほとんど依らないが振幅に依存する現象が見られた。さらにモデルパラメーターを変えて一般的な現象か調べる予定である。 (3)一方、速度に関しては非線形モデルによる速度の振幅に対する変化が知られていない。可積分ソリトンの運動方程式のAblowitz-Ladikモデルでは速度が振幅増大につれ上昇する。一方、離散的非線形シュレジンガーモデルにおいては速度が減少することがシミュレーションで観測されている。現在、この差を説明することができる算段が付いた。この結果をまとめ、投稿する予定である。 2. さらに別の計画として、実験にて連続走行を調べ、我々の提案する非線形モデルのチューニングによる走行を実証したい。実験系として現在、電気回路を用いた格子を検討中である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
部品の値段の見積もりと必要量などに、予定と実際とで差があったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
適切に実験に必要な電子部品等の購入に使用いたします。
|