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2014 年度 実施状況報告書

解ける量子力学模型と新しい直交多項式

研究課題

研究課題/領域番号 25400395
研究機関信州大学

研究代表者

小竹 悟  信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (40252051)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワード数理物理 / 解ける量子力学模型 / 直交多項式 / 離散量子力学 / 例外直交多項式 / 形状不変性 / アスキースキーム / 無反射ポテンシャル
研究実績の概要

既知の量子力学模型を変形して得られた,多添字直交多項式等の新しい直交多項式で記述される解ける量子力学模型についての知見を得る事が本研究の目的である。
通常の量子力学系では自由系にダルブー変換を施して無反射ポテンシャルを系統的に得る方法があるが,虚数シフトの離散量子力学系に対しても同様な方法が行える事を示した(雑誌論文1)。そこではロンスキアンの代わりにカソラティアンが現れる。そして無反射ソリトンポテンシャルの離散量子力学版に対しては,反射のある場合への拡張を与えた。その反射係数・透過係数を,q の絶対値が 1 となった場合の q-超幾何関数の接続公式を予想する事で得た。q の絶対値が 1 の q-超幾何関数は余り調べられておらず,この結果は数学者にも関心を持ってもらえた様である。
ラゲール,ヤコビ,ウィルソン,アスキー・ウィルソンの M-添字の多添字直交多項式が(3+2M)-項関係式を満たす事を昨年度示したが,その係数は変数に依存していた。これらの多添字直交多項式に対して,定数係数の再帰関係式に対する予想を与えた(Mが小さい場合には証明あり)(投稿中)。この関係式は双直交性の議論のために重要である。
虚数シフトの離散量子力学の解ける模型をシヌソイダル座標に基づいて構成する方法を以前与えたが,シヌソイダル座標が指数関数・双曲余弦関数・双曲正弦関数の場合について具体的に構成した(投稿中)。束縛状態は有限個で,固有関数は量子ダイログ関数とパラメータ q の絶対値が 1 であるアスキー・ウィルソン多項式(及びその極限)を用いて表される。
虚数シフトの離散量子力学系に対して,ダルブー変換を用いて擬仮想状態を取り除いた量子力学系と固有状態を取り除いた量子力学系の関係を議論し,カソラティアン恒等式を与えた論文を昨年度投稿したが,編集者とやり取りをし論文を改善して,掲載決定となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

既知の量子力学模型を変形して得られた,多添字直交多項式等の新しい直交多項式で記述される解ける量子力学模型についての知見を得る事が本研究の目的であり,先ずは多添字直交多項式そのものが持つ性質について明らかにしておく事が重要である。ラゲール,ヤコビ,ウィルソン,アスキー・ウィルソンの場合について,M-添字の多添字直交多項式が(3+2M)-項関係式を満たす事を以前示したが,その係数は変数に依っていた。双直交性の研究のためには定数係数の再帰関係式が有用であり,これらの多添字直交多項式が満たす定数係数再帰関係式の予想を与えた(Mが小さい場合には証明あり)。
虚数シフトの離散量子力学の解ける模型をシヌソイダル座標に基づいて構成する方法を,シヌソイダル座標が指数関数・双曲余弦関数・双曲正弦関数の場合に適用して解ける模型を得た。束縛状態は有限個で,固有関数は量子ダイログ関数と q の絶対値が 1 であるアスキー・ウィルソン多項式を用いて表された。
虚数シフトの離散量子力学系に対して無反射ポテンシャルを系統的に得る方法を与えた。そして無反射ソリトンポテンシャルの離散量子力学版に対しては,反射のある場合への拡張を与えた。これは上述のシヌソイダル座標が双曲正弦関数の場合に当たり,q の絶対値が 1 の q-超幾何関数の接続公式の予想を与え,反射係数・透過係数を得た。
2つ目に述べた研究は研究計画で具体的に述べてあったものである。3つ目の研究は研究計画では考えていなかったが,通常の量子力学系で知られていた無反射ポテンシャルを得る方法を離散量子力学系に拡張したものである。q の絶対値が 1 である場合のアスキー・ウィルソン多項式や q-超幾何関数は未だ余り研究が進んでおらず,これらの研究は数学者にも興味を持ってもらえた様である。これらの事から((1)と(2)の中間位であるが) (2)という評価をした。

今後の研究の推進方策

交付申請書の研究実施計画に書いた話題について研究を進めて行く事に特に変わりはないが,その順序については現在の進行状況を勘案して多少入れ替えていく。
アスキースキームの直交多項式の内,直交関係がジャクソン積分で与えられる直交多項式を虚数シフトの離散量子力学系として定式化する方法は与えられていなかったが,今回ほぼ理解できたので適当な時に発表する。それを基にしてそれらの例外直交多項式・多添字直交多項式も構成したい。
実シフトの離散量子力学系に対して無反射ポテンシャルの系統的な構成法を議論する。
実シフトの離散量子力学系で,ラカー,q-ラカーの多添字直交多項式は与えてあるが,ウィルソン,アスキー・ウィルソンの時に与えた再帰関係式と同様な再帰関係式がどうなるかを調べる。また,その極限として得られる多添字多項式について調べる。

次年度使用額が生じた理由

H26年度に高速かつ大容量メモリ搭載のデスクトップコンピュータを購入する計画であったが,メモリの値段が予想よりも安くならなかった。円安も1つの理由だが,もう一つの理由は新規格のメモリ(DDR4)の登場で,これはこれまでの規格(DDR3)よりも高速・大容量となる筈だが,出始めであるために未だ割高であり,容量も大きくない。H27年度後半になれば新規格メモリが大容量で安くなる事が予想されるので,デスクトップコンピュータ購入をH27年度に変更した。

次年度使用額の使用計画

今年度購入しなかったデスクトップコンピュータ,及び,情報収集のための旅費,その他消耗品を購入する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Reflectionless Potentials for Difference Schr\"odinger Equations2015

    • 著者名/発表者名
      S.Odake and R.Sasaki
    • 雑誌名

      Journal of Physics

      巻: A48 ページ: 115204 (21pp)

    • DOI

      10.1088/1751-8113/48/11/115204

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 解ける量子力学模型と |q|=1 のAskey-Wilson多項式2014

    • 著者名/発表者名
      小竹悟,佐々木隆
    • 学会等名
      日本物理学会2014年秋季大会
    • 発表場所
      佐賀大学(佐賀県)
    • 年月日
      2014-09-21
  • [学会発表] Some Properties of the Muti-indexed Orthogonal Polynomials2014

    • 著者名/発表者名
      S.Odake
    • 学会等名
      Exceptional orthogonal polynomials and exact solutions in Mathematical Physics
    • 発表場所
      Segovia (Spain)
    • 年月日
      2014-09-08
    • 招待講演
  • [備考] Recent Papers

    • URL

      http://azusa.shinshu-u.ac.jp/~odake/paper.html

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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