2階の微分方程式(差分方程式)を満たす通常の直交多項式は数学者により分類されており,アスキースキームと呼ばれている。次数に欠落があるにも拘わらず完全系をなし,2階の微分方程式(差分方程式)を満たす新しいタイプの直交多項式が2008年の発見以降精力的に研究されている。数学者のアプローチとは異なり,報告者達は量子力学的定式化を用いて解ける量子力学模型の研究を通して,この新しいタイプの直交多項式を調べている点が特徴であり,発展の原動力となっている。アスキースキームの頂点に位置する多項式については,新しいタイプの直交多項式である多添字直交多項式を構成してあったが,下位の多項式の幾つかに対しても多添字多項式を構成した。この新しいタイプの直交多項式では通常の直交多項式の特徴付けである3項関係式は成り立たず,より項数の多い再帰関係式が成り立つ事が期待されていたが,それを具体的に示す事ができた。この種の再帰関係式は数学では重要視されているので,多添字直交多項式においても再帰関係式が見い出された事は意義深い。変数係数と定数係数の再帰関係式があり,後者を利用する事で量子力学模型の生成消滅演算子の構成も行った。多添字直交多項式はロンスキアンやカソラティアンと呼ばれる行列式を用いて定義されたが,量子力学模型の形状不変性を用いる事で,別の形のより簡単な行列式表示を得る事ができ,これは多添字直交多項式の理解に役立つと考えられる。この他にも,新しい解ける離散量子力学模型の構成や無反射ポテンシャルの一般的構成等,解ける量子力学模型を数多く見い出す事ができたので,量子力学模型の研究に大きな寄与ができたと思われる。
|