研究課題/領域番号 |
25400400
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 剛 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20346076)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乱流の大規模構造 / ノイズによる転移 |
研究概要 |
閉じた容器内にはいった流体に何らかの外力を加え続けて、乱流を維持すると容器と同じ程度の大きさをもつ循環流(例えば右回りに容器をぐるりとまわる流れ)が乱れのなかに形成されることがある。さらに、設定によっては、この循環流が自発的に反転することが主に実験的に知られている。 この自発的反転現象の力学的機構の解明のために、本年度は2次元正方形領域内で時間相関のあるランダム外力で駆動される乱流系の解析をおこなった。この系は自発的反転現象が生じることが先行研究で既に報告されており、おそらくこの現象をしめす最も単純な流体系(ミニマルモデル)であると考えられる。この系を対象として大きくわけて2つの数値的方法での研究をおこなった。一つは、先行研究と同様に高精度な数値計算法(直交多項式展開を用いた重み付き残さ法)を用いること。2つめは将来の3次元系での反転ミニマルモデル構築のために、数値的精度は多少犠牲になるが埋め込み境界法を用いて2次元正方形領域系の計算を再訪することである(3次元では2次元では可能な高精度な数値計算法が実際上使えない)。 前者の方法をもちいた研究では、数値的な力学系解析を行って、循環流に相当する定常解など特徴的な数値解を探査する目的であったが、誤差や収束の問題から、この探査にはさらに時間を要する。後者の方法をもちいた研究では、高精度な数値計算法での結果とほぼ同様の反転結果が再現できることが確認できたため、3次元への拡張が行える可能性がたかまった。また反転のための外力条件については、反転に必要な相関時間や外力のスケールについての条件が整理できつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特に、先行研究と同様の高精度数値計算法(チェビシェフ・タウ法)をもちいた解析の点でやや遅れている。この数値計算法の結果から、力学系的解析を行うことが目的であった。この解析では系の特徴的な振る舞いに相当する定常解などを数値的に探索するが、ここに誤差評価などの困難があり当初の予想よりも時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
2次元正方形領域内の高精度数値計算法(チェビシェフ・タウ法)を用いた力学系的解析を続行する予定である。しかし、乱流場の計算結果を観察すると、おおまかには一方向に回転する大規模循環流といえども揺らぎが大きく、単純な定常解などではとらえきれない可能性についても検討が必要と思われる。また、この系で本質的な役割をしめしていると考えられる外力がランダム力である点と、このランダム力の大きさが非摂動的であることから、決定論的力学系の枠をこえて確率論的力学系としての性質もあわせて検討する必要が強い。これは従来の乱流力学における数値的不変解の手法の拡張に相当するかもしれない。 また、今年度に解明した、反転が生じる外力パラメータの範囲について物理的な考察を加える(例えば反転に最適な相関時間や空間スケールが系の何がしかの構造と対応がつくか否か等)。 さらに、2次元正方形系において、埋め込み境界法を用いた数値計算結果が高精度数値計算法とほぼ首尾一貫する結果を与えたので、この方法を用いて、3次元系での大規模循環流反転をしめすミニマルモデルの構築をおこなう予定である。
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