流体乱流の特徴は、大きい乱れから小さい乱れまで様々な時間空間スケールの運動がほぼ相似的に存在し、強く非線形相互作用をしていることである。閉領域内の乱流では、この様々なスケールの乱れの積算効果の一つとして、乱流中に秩序だった大規模流れが形成されることがある。さらに、この大規模流れの向きが確率的に逆転する場合があることもしられている。 本研究の対象は2次元正方形領域内でランダムな外力が印加されて統計的に定常な乱流が維持されている系である。この系は大規模な秩序的流れが形成され、さらにこの大規模流れの向きが不規則に反転する性質を示す最も単純な系のひとつとして知られている。 昨年度27年度までに、この系の反転についてナビエストークス方程式に基づく単純な確率論的モデルを考案した。このモデルでは反転時間間隔について定量的な一致が得られ、反転の支配機構については粘性と外力の特徴スケールであるとの考察結果が得られた。また、この支配パラメータである粘性や外力のスケールを変えることにより、このモデルの適用限界についても研究を行った。さらに、反転の機構を力学系的に考察するために、乱流の統計的定常性を維持する外力をランダムなものから決定論的なものに変えた場合の乱流の振舞いについても研究を行った。後者の場合、ランダム外力下の反転と類似の時間スケールをもつ安定周期解(ただし反転には至らない)などが見つかっており、反転に関しての力学系的描像の検討を行った。しかしながら、両外力下での反転描像を統合する点については定性的な議論にとどまっている。 特に本年度28年度は上記の成果を国際学会で発表し、さらに2次元乱流の研究拠点でセミナーを行って成果発表と議論をおこなった。近日中に成果を原著論文として投稿する予定である。
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