長距離相互作用系の自己組織化の研究課題のもと、いくつかのテーマで研究を行った。 1.地震の数理モデルにおける時空カオス化と余震のメカニズム:弾性相互作用する系の1つの問題として、地震を多数のばねとブロックの結合系で表現するCarlson-Langerモデルが知られている。均一な系にも関わらず、さまざまな大きさの地震が発生する原因が、系の時空カオス性に起因することを示した。系が一様化する傾向と、不安定性により不一様性が増大する傾向の両側面を持ち合わせる結果、間欠的振る舞いがあらわれることを示した。また、系に粘弾性素子を導入すると、その時間遅れのために、余震が発生することをしめした。粘弾性素子に非線形性を入れると余震の発生頻度がが時間とともにべき的に減衰することを示した。これは余震の大森公式に対応している。 2.粘菌の振動位相を利用した集合ダイナミクス:細胞性粘菌は養分が少なくなるとサイクリックAMPを周期的に放出し、その信号の発生源に向かって集合する性質がある。リミットサイクル振動を位相で表わし、細胞の集合をケラー・ジ-ゲルモデルを用いて表現し、集合の時間変化を数値計算した。初期には多数の細胞のクラスターが生じるが、クラスター間に競合が生じ、より多くの細胞が集まっているクラスターが勝ち残り、最終的に一つのクラスターになる。位相情報は波動のように伝搬し、減衰もしないので、長距離まで効率よく情報を伝えることができる。 3.内閣支持率の変動の統計則:多くの国の内閣支持率の月ごとの変動データを解析し、月ごとの支持率の変化の大きさが指数分布に従っていることを見出した。また、時間揺らぎにセルフアフィン性があることを見つけ、長時間記憶項を持つ自己回帰モデルでそのモデル化を行った。
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