研究課題/領域番号 |
25400406
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
岡部 豊 首都大学東京, 理工学研究科, 客員教授 (60125515)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モンテカルロ法 / クラスターフリップ法 / GPU / 並列計算 / イジングモデル / ポッツモデル / XYモデル / 準結晶 |
研究実績の概要 |
新しいモンテカルロ法を用いて、主にスピン系の統計力学の問題に取り組んでいるが、最近、Graphical Processing Unit (GPU) をクラスターアルゴリズム・モンテカルロシミュレーションに応用するプログラム開発を行ってきた。一昨年度、このプログラムを整理した論文を発表し、プログラムライブラリーとして登録し、一般公開をしたが、今年度は、それを拡張した、ver.2 のプログラムライブラリーを公開した。クラスターフリップのアルゴリズムの改良版を用いること、完全に倍精度計算に対応すること、乱数として標準ライブラリー cuRAND を用いること、などが主な拡張点である。 GPUによるクラスターアルゴリズムの応用として、準結晶上のスピン系の相転移の問題を取り扱った。具体的には、ペンローズ格子上のイジングモデル、また、その双対格子上のイジングモデルの高精度計算を行った。この問題は、1988年に研究代表者のグループにより研究された課題であるが、当時の計算精度では、臨界温度の決定など、3桁精度程度であった。準格子上のイジングモデルについても、双対格子との間に、双対関係が成り立つことを強く示唆していたが、その精度は十分ではなかった。GPUを用いた並列計算により、20633239という非常に大きなサイズの系を扱うことができ、従来の計算に比べて、2桁精度の高い計算結果を得ることができた。その結果、双対関係も数値的に非常に高精度で示すことができ、解析的な検証も行った。 昨年度、2つのサイズのシミュレーションを並行して実行し、モーメント比のような量を測定しながら、温度を変動させ、臨界点を自動的に決定できる、「2サイズ確率変動クラスターアルゴリズム」の開発を開始した。今年度は、2次相転移を示す系に対する、この方法の詳しい吟味を行うと同時に、1次相転移を示す系への応用も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プログラムライブラリーとしてプログラムを公開してきたが、今年度はそのver.2を公開した。順調にダウンロードされており、他の研究者から評価されていると言える。 GPUによるクラスターアルゴリズムの応用として、準格子上のスピン系の統計力学の問題を取り上げ、従来の計算より、格段に精度の高い議論をできた。さらに多くの問題への応用の道を開いたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
GPUによるクラスターアルゴリズムの有効性が示されたので、引き続き、アルゴリズムの開発を進めると共に、具体的な問題への応用を展開していく。 「2サイズ確率変動クラスターアルゴリズム」の有効性を具体的に示すと共に、準格子上のスピン系の統計力学の問題も発展させる。乱れのある2次元超伝導体におけるパーコレーション描像が成り立つかという問題、国際共同研究の提案がありながら中断しているので、それも推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
毎年、研究論文を発表するなど、研究は順調に進行している。しかしながら、研究成果の発表を予定した国際会議に出席できなくなり、次年度に参加、発表をする。また、プログラムライブラリーを公開するなど広く研究成果の一般公開に努めてきたが、新たに開発したプログラムをさらに追加するバージョンアップが必要になり、新しいGPUでチェックすることが有効であり、GPUの増強を次年度に回す。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表のための、国際会議参加旅費と、GPUシステムの購入費が主な使用計画である。
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