研究課題/領域番号 |
25400413
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
阿久津 典子 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (40167862)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結晶の表面張力 / 1次元引力型ボーズ粒子 / 頂点模型 / ステップ・ファセティング / Si(111)面 / ステップ・バンチング / 結晶成長抑止 / 基底状態エネルギー |
研究実績の概要 |
1.ファセティング転移(1次元ボーズ粒子の凝集問題): 引力型1次元非貫通型ボーズ粒子の凝集問題の表面版はファセティング転移である。ファセティング転移についてp-RSOS模型による不連続な表面張力と結晶成長抑止効果について結晶成長の研究者向けに論文を発表した。ナノテクノロジーへの有用性が理解され、結晶成長に関する国際会議(3CG2014、2014年12月、タイ、プーケット)で招待講演を行った。また、界面に関する国際会議(YTTP workshop)で1次元ボーズ粒子の凝集と等価なファセティング転移の報告をした。表面観測に関する国際会議(LEEM/PEEM-9)にファセティング転移を発表した。 2.1次元ボーズ粒子と表面模型の関係:表面模型による引力型1次元非貫通型ボーズ粒子の可視化について日本物理学会秋の分科会(2014年9月、中部大学)で発表した。RSOS-I模型とp-RSOS模型のシェイプ・エクスポーネントの違いを説明できる可能性が出てきた。 3.Si(111)表面模型計算: Si(111)面に上記の模型計算を応用し、表面張力の異常性から平衡状態近傍のステップ・バンチングが説明できることが判った。また、LEEMによるSi(111) 面のステップ・スティフネス測定値から温度T=0でのステップ・エネルギー値を定めることができ、論文として発表した。この値をもとに表面現象を統一的に再現することを試みた。その結果、統計力学模型の基礎量となるミクロなステップ・エネルギーはさらに化学結合と格子歪に分離でき、その値をそれぞれ定量的に求めることができた。この成果の一部は、日本物理学会秋の分科会(2014年9月、中部大学)、国際会議LEEM/PEEM-9、結晶成長の数理(学習院大学計算機センター、2014年12月)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請では4つの目的を掲げたが概ね達成している。 (1)オリジナルRSOS模型について計算がほぼ終了している。(111)方向に傾いた結晶微斜面の表面自由エネルギーに関するステップ密度展開形の係数を数値的に求め、フェルミオン系には現れない項が存在することを突き止めた。その項は隣り合うステップ(ボーズ粒子)同士の衝突によって生ずることを明らかにした。 (2)ステップ・ファセティングが起る仕組みを解明した。1次元ボーズ粒子系では3粒子以上が同じ場所に来られないという準非貫通性が実効的な排除球を形成し、それが多様な凝縮相、すなわちステップ・ファセティング相(1次元ボーズ固体相)、ステップ・ドロプレット相(1次元ボーズ液体相)、を可能にしていることを明らかにし、論文に纏めつつある。 (3)吸着子のある微斜面を想定したRSOS-I模型についてp-RSOS模型(001)面近傍のシェイプ・エクスポーネントと異なる値が得られていたが、p-RSOS模型の(111)面近傍の振る舞いと同様であることが判りつつある。 (4)Si(111)面に上記の模型計算を応用し、表面張力の異常性から平衡状態近傍のステップ・バンチングが説明できることが判った。この結果は背後にある1次元ボーズ粒子系の性質に基づく振る舞いである。ステップ・バンチングによる結晶の不均一成長は育成結晶の品質を損なう。この不均一性を制御できる可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 当初の研究目的はほぼ達成されたので、成果を論文に纏めつつある。 (2) ステップ・ファセティング相(1次元ボーズ固体相)、ステップドロプレット相(1次元ボーズ液体相)、GMPT普遍相(1次元フェルミオン的ボーズ気体相)の相図を作成する。相境界線を詳細に調べ、相転移の仕組みを深く理解する研究を行う。 (3) 吸着子のある微斜面を想定したRSOS-I模型についてp-RSOS模型(001)面近傍のシェイプ・エクスポーネントと異なる値が得られていたが、p-RSOS模型の(111)面近傍の振る舞いと同様であることが判りつつある。1次元量子スピン系におけるYan & Yan (1964) の厳密解、特にラフ相に対応する式でシェイプ・エクスポーネントが説明できる可能性が出てきたので、その方向で解析を進める。 (4) 様々な物質表面の表面張力異常性によるステップ・ファセティングが1次元準非貫通型ボーズ粒子系の凝縮相への転移として普遍的に理解できる可能性が出てきた。Si(111)面だけでなく、氷、GaN等のナノテクノロジーへ応用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(2015年度)にUSA Maryland大学T.L.Einstein教授を訪問し、研究打ち合わせを行う旅費に使用するため、物品費、人件費を一部未使用にした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(2015年度)にUSA Maryland大学T.L.Einstein教授を訪問し、研究打ち合わせを行う旅費に充てる。
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