研究課題/領域番号 |
25400420
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
桑本 剛 日本大学, 理工学部, 専任講師 (10337909)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ボース・アインシュタイン凝縮体 / 量子渦 / 動的不安定性 |
研究概要 |
(1)- レーストラックコイル磁場に捕獲された,87Rbボース凝縮体への巨大渦の生成 - 本研究課題を遂行するためには,光トラップされた87Rbボース凝縮体に動径方向四重極磁場を印加した上で軸方向の磁場反転を行い,2以上の渦度をもつ量子渦(巨大量子渦)を生成する必要がある。これを実現するための予備実験として,動径方向磁場を生成するレーストラック型コイルにボース凝縮体を捕獲し,軸方向の磁場を反転することで巨大量子渦を生成する実験を試みた。60 G/cmの動径方向勾配磁場にてボース凝縮体を捕獲し,磁場反転により渦度4の量子渦の生成に成功した。 (2)- 光トラップされたボース凝縮体への巨大渦の生成実験 - 引き続き,交差型光トラップを構築してボース凝縮体を捕獲し,レーストラックコイルで動径方向四重極磁場を印加し,軸方向磁場を反転して巨大量子渦を生成する実験を進めた。しかし,ゼロ磁場位置調整に使用している補正磁場等の外部磁場の微小変動により,極めて低い渦生成効率しか得られなかった。 (3)- 量子渦生成効率の改善 - 低い量子渦生成効率を改善するために,ボース凝縮体を生成する際に使用するQUIC型磁気トラップを用いる新しい方法を検討した。詳細な磁場計算を行い,新方式では補正磁場を印可する必要がなく,安定的に渦生成が行える可能性が高いことを見い出した。現在,新方式に最適な交差型光トラップの構築,ボース凝縮体中の原子数を2倍程度に増幅させるための真空系の改善等を完了した。今後はまず,QUIC型磁気トラップがつくる磁場を外部制御磁場で操作して,渦度4の量子渦を生成する実験を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
動径方向四重極磁場を発生させる方法として,当初考えていたレーストラック型コイルを使用する方法では,微小な外部磁場の変動が,量子渦生成の効率を大きく下げてしまうことが,実験を進めていくうちに判明した。量子渦を生成するためには,レーストラック四重極磁場のゼロ磁場線を,補正磁場系により,ボース凝縮体の中心に位置させる必要がある。しかし,ボース凝縮体の動径方向直径が10μmと小さいため,極めて微少な補正磁場の変動でもゼロ磁場線がボース凝縮体の外部に出てしまう。そうなると量子渦は生成できない。 研究開始前の,補正磁場発生コイルに用いる電源の精度を基にした検討では,量子渦の生成は安定的に可能であるとの結論を得ていたが,予想以上にコイルの振動やコイル位置移動が大きいことが判明した。 上記の問題の解決に向け試行錯誤するうちに時間が経過していまい,当初の計画から遅れてしまった。 しかし,問題を解決でる有望な新方法を考案したので,今後は精力的に研究を進め遅れを取り戻し,研究計画通りに成果をあげる所存である。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの達成度】に記載したように,思わぬ瑕疵があったために実験方法の変更が必要となったが(研究計画自体には変更はない),新しく考案した光トラップされたボース凝縮体への渦生成方法では,補正磁場印加の必要がないので,非常に安定的に渦生成ができると予想される。今後は,早期に光トラップ中ボース凝縮体に巨大量子渦を生成し,その動的振舞いを観測する研究に移行する。空間分解能や精度を高めるために,ボース凝縮体の撮像分解能を向上させる改善を行い,巨大量子渦ダイナミクスの時間制御,対向巨大量子渦対の生成など,計画に挙げた研究テーマを進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初,研究課題に必要な電子回路の製作に用いる電子部品の購入に使用する予定であったが,電子回路の設計変更に伴い必要なくなったため,当該未使用残高が生じた。 本年度は,前年度にやり残した開発研究をやり終え,本格的に実験研究を開始する予定である。これには多くの光学素子が必要となる。当該未使用残高は,それらの購入に使用する。
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