研究課題/領域番号 |
25400422
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
近藤 康 近畿大学, 理工学部, 教授 (40330229)
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研究分担者 |
中原 幹夫 近畿大学, 理工学部, 教授 (90189019)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 量子誤り訂正 / 頑強な量子ゲート / 量子ゼノン効果 / NMR測定への応用 / 選択的2量子ビット演算 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本年度は、「量子誤り訂正」、「ロバストな任意量子ゲート」、「量子ゼノン効果」、「複合パルスのNMR測定への応用」、「選択的2量子ビット演算」の研究を行った。 「量子誤り訂正」の研究では最もシンプルなノイズレス・サブシステム(NS)を応用した誤り訂正の理論的考察とNMR量子コンピュータを用いた実装を行った。保護される量子ビットは1個だけではあるが、2個必要なアンシラは完全にランダムな状態でよく実装し易い。Physcal Review Aに掲載された。 「ロバストな任意の量子ゲート」と「量子ゼノン効果」は、近藤がドイツのドルトムンド大学のSuter教授の下に滞在した8月の1ヶ月間の研究が発端になっている。メールによる密接な連絡によって研究を継続した。「ロバストな任意の量子ゲート」に関する研究では、2013年の物理学会誌7月号の記事「ロバストな量子ゲート」を発展させたものである。一方、「量子ゼノン効果」の研究では、理論に止まらず実験を行った。我々は位相緩和を起こす「人工的な環境-システム」を構築することによって、量子ゼノン効果よる位相緩和の抑制のデモに成功した。 「複合パルスのNMR測定への応用」は、分子科学研究所と学習院大学との共同研究である。我々はNMRで使われてきた技術を量子情報の分野に応用することを行ってきた。本研究では、逆に我々が量子情報のために開発してきた技術をNMR測定に応用しようという試みである。我々が研究してきた入れ子型複合パルスをNMR測定で頻繁に行われているハーン・エコー法によるT2測定と2次元測定であるCOSY測定に応用した。 「選択的2量子ビット演算」の研究では、多数の量子ビットが相互作用を行っている中で、実効的に特定の量子ビット間の2量子ビット演算を行う方法を議論した。3月末にPhyscia Scriptaに出版受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、「量子誤り訂正」と「選択的2量子ビット演算」が学術雑誌に掲載あるいは掲載決定になった。その他、本科研費の採択前に掲載決定されていたものであるが、本科研費の研究テーマと密接に関連した研究「頑強な量子ゲート~複合量子ゲート~」が「最近の研究から」として、日本物理学会誌第68巻7号に掲載された。また、本研究に密接に関連した科研費の別テーマにおいて「Two-Qubit Gate Operation on Selected Nearest-Neighbor Neutral Atom Qubits」がJPSJに掲載決定になった。 共同研究体制においては、近藤がドイツのドルトムント大学のSuter教授の下に滞在することによって、Suter教授の研究グループと新たに共同研究を行う体制を整えることができた。それによって、「研究実績の概要」に述べたように「ロバストな任意の量子ゲート」と「量子ゼノン効果」の研究を始めることができた。なお、この研究はNTT物性科学基礎研究所の松崎博士との共同研究でもある。まだ論文の投稿には至っていないが、執筆の最終段階に入っておりまもなく投稿できると考えている。その他「複合パルスのNMR測定への応用」に関する研究も論文執筆の最終段階に入っている。これは分子科学研と学習院大学との共同研究である。このように外部との共同研究体制も整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
「ロバストな任意量子ゲート」、「量子ゼノン効果」、「複合パルスのNMR測定への応用」の研究などはまだ投稿できていないので、できるだけ早く投稿を行う。 「量子ゼノン効果」の研究に関連して、緩和試薬を用いた新しい「人工的なノイズ導入法」の目処を立てることができた。我々が以前提案した「時間平均法による人工的なノイズ導入法」を含め、他のノイズ導入手法よりも容易でしかも良く制御された「ノイズ」を導入することができる。そこで、この系をモデルとしてノイズ下でも高忠実度を維持できる「オープン・ループ制御による高忠実度量子ゲートの研究」を行っていく。最初に行う研究はノイズ対策として有効であることが知られている「バンバン制御」をこの系に適用してその振る舞いを調べることである。 1ヶ月間Suter教授の研究グループと研究を行い大きな刺激を受けて本研究は大きく進展した。今後も内外の研究者と共同研究を行う機会をできるだけ作って、研究の発展を図る。 (次年度の研究費の使用計画) 平成25年度における1ヶ月間のSuter教授の下での研究が非常に生産的であった。そこで、次年度も是非1ヶ月ほどの滞在を他の研究室で行いたいと考えており、科研費をその費用に充てる。また、本研究では「我々が実験に用いるNMR装置や医療用MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置の原理を修得するための学生実験用のNMR装置の開発」も目的の一つと掲げており、その開発のための材料費や試料代などに本科研費を充てる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進渉状況を考慮し、情報収集のための費用と論文投稿のための費用を次年度に繰り越した。 上記の情報収集の学生アルバイト代のためと現在執筆中の論文投稿料として使用する予定である。
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