研究課題/領域番号 |
25400424
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
早川 美徳 東北大学, 教育情報基盤センター, 教授 (20218556)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 群れ / 集団動力学 / ステレオカメラ / 位相相関法 / 動態 / 計測 |
研究概要 |
鳥の群れの動態を計測するためのステレオカメラシステムの製作と改良を行った。まず、画素数400万でグローバルシャッター方式のCCDカメラを導入、その制御部を新規に製作し、毎秒60コマのフレームレートで完全に左右の画像が同期した状態の鮮明なステレオ動画が取得できることを確認した。このシステムを宮城県内の観察地に設置し、30回以上のデータ収集を実施した。対象としたのは、集群性が高く密な群れを形成するムクドリと、いわゆるV字型の飛翔隊形を呈するマガンである。 次いで、ステレオ動画像から、群れの中の各個体の三次元的な軌跡を再構成するためのソフトウェアの開発を行った。従来は、イメージ処理・解析ソフトとして知られるNIH ImageJのプラグインを独自開発し、画像内の各個体の同定と位置計算を手動で行っていたが、一連の処理の大半を自動化・高速化できるよう、アルゴリズムの再検討と画像処理ソフトウェアのコーディングを実施した。画像の中から鳥のみを自動的に検知するとともに、時間的に隣り合うコマの画像間での位相相関から個体の同定を行い、ステレオ計測から得られた三次元座標に時間軸を加えた4次元データ点情報と併せることで、それぞれの個体の軌跡を高い確率で追尾できることを確認した。 こうして得られた時間・空間的なデータを元にして、鳥の視点で群れ内部の動態を動画として表示するためのソフトウェアを作成しデータの確認と可視化を可能とすると共に、個体間の速度相関、加速度相関等の定量的な解析が可能であることを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、1. 三次元計測機器の改良と調整、および、2. 画像処理プログラムの開発と確率的トラッキングアルゴリズム開発・実装、の二つを今年度中に実施する計画としていた。1については、動画のフレームレートが当初の計画に較べて2割程度低いものの、ほぼ、狙い通りの性能を出すことができた。また、画像処理に関しても、当初計画していた確率的なトラッキングアルゴリズムに代えて、ヒューリスティックなアルゴリズムを組み合わせる形で、目的とする性能・動作は概ね達成された。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に開発・改良したシステムによって、カメラから100メートル程度の範囲を飛行する群れであれば、十分な精度で三次元軌跡を再構成することが可能となったが、フィールドでの試行の結果を検討した結果、有効なデータを確実に得るためには、計測範囲を150mから200m程度まで拡張する必要性が明らかとなった。そのため、カーボン素材等を用いて、ステレオカメラの基線長を延ばし、これに対応する計画である。 今後は、現状のシステムに改良を加えつつ、当初の計画に沿って、A. マガンの群れの波動、および、B. ムクドリの液滴運動のダイナミクス、について解析を進め、鳥の群れ内部の有効相互作用の推定、群れ運動を支配する遅いダイナミクスの抽出、および、実データに依拠した数理モデルの提案を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究を効率的に推進したことによるもの。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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