研究課題/領域番号 |
25400426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
城所 俊一 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (80195320)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タンパク質分解酵素 / 速度論的安定性 / 自己失活 / 熱測定 / 1次反応 / 2次反応 / 活性化エンタルピー / thermolysin |
研究概要 |
1.自己分解反応を考慮したDSCの速度論的解析方法の開発 活性を持つ天然状態(N状態)から活性を失った変性状態(D状態)への、構造転移による1次反応と、自己分解反応による2次反応とが同時に起きる速度論的モデルに基づいてDSCデータを非線形最小2乗法で解析する方法を開発した。本研究では、ルンゲクッタ法を用いた数値積分により微分方程式の数値解を求めて使用した。この際に、それぞれの速度定数とその温度依存性とを決める活性化エンタルピー、ND間のエンタルピー変化とその温度依存性とをfittingパラメターとした。 本研究では、昇温速度やプロテアーゼ濃度を変えた複数の実験データを共通のパラメターを使ってfittingする、いわゆるグローバル解析の方法についても開発に成功した。個々のデータは1次反応的であっても、特に酵素濃度依存性を同時に解析することで、これらの速度論的パラメターは十分に決定できることがわかった。 2.thermolysinの熱変性の速度論的解析 thermolysinはの耐熱性は工業的にも重要な指標であるが、熱変性は完全に不可逆であるため、平衡論的な取扱いは困難であり、速度論的な手法としては構造変化による1次反応モデルでの解析のみが報告されていた。我々はthermolysinの熱変性は1次反応だけでは説明できず、自己分解反応の寄与が無視できないことを明確にし、前項目で開発した解析法を用いて、様々な昇温速度と酵素濃度の測定を1組の共通のパラメターでグローバル解析することでthermolysinの1次反応と2次反応の反応速度定数とその温度依存性とを決定することに成功した。同様の手法で、洗剤に使用されるsavinaseの熱変性が、前項のモデルで解析可能なことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに解析法を開発するとともに、このモデルで当初計画していたthermolysinに加えてsavinaseの速度論的安定性も十分に説明できることを確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
Thermolysinの濃度依存性の実験で、濃度を極端に高くすると今回開発したモデルでは説明できない熱転移の微細構造が観測された。また、savinaseの速度論的安定性については、共存するカルシウム濃度による速度論的安定性の変化を確認できた。当初の計画に加えて、これらの現象についても重点的に研究を進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
解析法の開発と実験に必要な物品費が当初の予定よりも順調に進むことで節約できたことと、参加予定学会の旅費が節約できたことで当初の計画よりも初年度の研究費の支出を抑えることができた。 この予算を利用して、次年度は当初予定に含まれていなかった新しい現象(thermolysinの高濃度領域での熱変性)の解明や新しい対象(savinaseの速度論的安定性の詳細)を含めて研究を進める予定である。
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