研究課題/領域番号 |
25400428
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉森 明 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90260588)
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研究分担者 |
秋山 良 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60363347)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 溶媒粒子のエントロピー / シャペロニン / 溶媒粒子の非平衡分布の効果 / アインシュタインの粘度式 / 溶質溶媒動径分布関数 / 溶質溶媒相互作用 / 希薄溶液の粘度 |
研究実績の概要 |
当該年度は以下の成果を得た。
1. 生命に対する水の動的な効果が未だ解明されていないのは、理論的な手法が確立していない事が大きな原因と考えられる。これまで、水が平衡状態にあるときは、生体分子が感じる平均力ポテンシャルにより、水の静的な効果は調べられていた。この研究では、動的効果を調べる理論的手法を確立する。このために、水の密度場の時間発展を計算できる動的密度汎関数理論を使う。まず、水の非球対称な相互作用を無視し、水の重心の密度場だけで記述できる場合を考える。その水の中に、3次元で何の対称性も持たない生体組織を浸し、さらに、時間的にその位置を変える生体分子を考える。そのような状況で、動的密度汎関数理論を使い、水の分布の時間変化を計算する理論を構築した。この理論を籠上の生体組織の中に球状の生体分子は挿入される系に応用した。
2. 溶質溶媒相互作用を考慮して、希薄溶液の粘度を計算する理論を定式化した。理論は、平衡状態の溶質溶媒動径分布関数を使って、溶質溶媒相互作用が起こす溶質まわりの溶媒粒子の不均一な分布を考慮できる。理論はアインシュタインの粘度式の微視的な拡張になっている。溶質粒子が溶媒粒子よりも充分大きいと仮定して、摂動展開を使った。この摂動展開から、通常の流体力学方程式と溶質の表面の新しい境界条件を得た。溶質溶媒の相互作用は、この境界条件に含まれる。理論を簡単な動径分布関数の系に応用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粘度は実際の系には応用できなかった。論文を雑誌に掲載するのに手間取った。それ以外は計画通りだった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 水分子の非平衡の効果の研究の結果をまとめる。容器の大きさを変える計算や、そこに穴がある場合の計算を行う。 2. 多成分における希薄溶液の粘度の理論を開発し、粘度における混み合い効果を明らかにする。 3. これまでの研究成果をまとめ、生物学的な意味を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算より旅費を使わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
「次年度使用額」は物品費に加えて使う。
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