研究課題/領域番号 |
25400430
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高松 敦子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20322670)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ネットワーク / 真正粘菌 / 適応 / 最適化 |
研究実績の概要 |
3カ年の研究計画は(1)ネットワーク形態の定量分析、(2)ネットワーク最適化理論の導入、および(3)細胞生物学的分析の3つから構成される。 (1)の一部と、(3)のうちDAPI染色による観察は、既にH25年度に実施済みである。H26年度は(1)の一部と、(2)についての情報収集を行った。(1)については、H25年度は質量(細胞サイズ)によるネットワーク形成への効果を検討してきたが、H26年度は誘引、忌避、二つの環境条件下で真正粘菌ネットワークが形成される過程の画像を取得し、ネットワーク分析を行った。これまでと同様、管の分岐点の分規則に着目した解析を行った。3乗則分岐がエネルギー損失の小さい分岐であることがきたいされていた。分析の結果、誘引環境においては3乗則よりは対等な太さで分岐する点が多く、忌避環境においては太い管の分岐点では3乗則がよく見られることがわかった。この結果から、忌避環境においてよりエネルギー消費が小さいこととの関連性が示唆される。これまで、太い管というあいまいな指標で管を分類してきたが、ネットワークにおける機能から管を分類するため、新たに媒介中心性という指標を導入した。これは、その分岐点またはその管がどれだけの頻度で利用されるかという指標である。現在、媒介中心性と分規則との関係が明らかになりつつある。 次に、環境依存のネットワークがどのように形成されるか見るために、管内の流れと、管成長の関係を調べた。流れがあるほど管成長し、流れがなければ減衰するというモデルが提唱されてきた。現在、詳細は検討中であるが、管径成長も環境依存があることが示唆されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画のうち、(1)については予定通りに分規則、管内流れの観察の解析まで進捗している。H26年度に(3)のミトコンドリア活動をモニターする蛍光観察と、(2)の最適化理論導入に着手する予定であった。(1)の定量分析に予想よりも時間がかかったため、(2)については今年度は情報収集に留まった。(3)については、Mito Tracker染色では通常の蛍光顕微鏡下ではうまく観察できなかったため、新たな手法を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、誘引環境と忌避環境におけるネットワーク形成過程には、ネットワーク・トポロジー、管長分布、管径分布、分規則、媒介中心性などあらゆる指標で環境依存性が確認されている。このように定量的なデータは蓄積しつつあり、今後は定量データに基づいたネットワーク形成理論に展開していく必要がある。忌避環境においては、樹状ネットワークを形成するので、これまで主に血管ネットワークで検討されてきた分岐則の理論が適用できるだろう。一方、誘引環境下のネットワークは、ループ構造をもつだけでなく、対等分岐が至る所で見られる。このネットワーク形態の優位性については、新たな方向性で理論を検討していく必要があるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
管内の流れと管成長の管系について、現在精緻がデータ解析を進行中である。それに伴い、研究補助員を27年度4月より雇用する必要が発生した。そのためH26年度後半から節約を行い、雇用費用として予算を次年度に先送りした。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度に先送りした予算は、研究補助員の雇用費用に利用する。
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