研究課題
本研究では、空間的束縛を受けた液体イオウ中の高分子の自己秩序化の可能性を、斜入射中性子小角散乱法によって探ろうとするものである。すなわち、これまで液体イオウにレーザー光を照射したときに生じたマクロなパターン形成の結果をもとに、同様な試料容器の厚さによる空間的束縛効果が温度変化によっても現れないかを調べる。平成27年度では、これを実現するための電気炉システムの製作、整備を継続した。残念ながら、本来の目的であった液体イオウの斜入射中性子小角散乱測定の実現には至らなかったが、電気炉をJ-PARCの中性子小角散乱測定装置(大観)で使用できるまでになった。また、同じランダム系でイオウを含み光誘起変化を示すアモルファスGe-S系薄膜における銀の光拡散現象を斜入射光学系による測定(中性子反射率測定)により明らかにする試みを継続した。フランス中性子実験施設のラウエ・ランジュバン研究所で行った測定では5秒分割の測定に成功し、これまでの最短の30秒分割ではわからなかった短時間領域における変化が明らかになった。また、J-PARC写楽でのGe組成や光照射方向を変えた測定からは、銀の拡散の仕方がGe組成、光照射方向で大きく異なることが明らかになった。さらに、ある特定の試料条件下では、薄膜表面が自己組織化したとみられるマクロなパターンが形成されることがわかった。この薄膜表面を走査型電子顕微鏡を用いて調べたが、この表面膜はAg-Ge-S化合物であり、波のように皺のよった形状をしていることが明らかになった。光照射により液体のように膜が柔らかくなり、かつ、基板との界面張力との関係もしくは体積変化にともなう基板との整合性のミスマッチ等により、こうしたマクロな動きが生じたものと考えられる。ここで観察された変化の考察は、液体イオウ薄膜でレーザー照射によって形成されるマクロなパターン形成の理解にも通じるものである。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Physica Status Solidi A
巻: online ページ: online
10.1002/pssa.201533037 a
JPS Conference Proceedings
巻: 8 ページ: 031023-031023
10.7566/JPSCP.8.031023
Journal of Physics: Conference Series
巻: 619 ページ: 012046-012046
10.1088/1742-6596/619/1/012046