研究課題
基盤研究(C)
生命現象を理解するには、構成要素である生体粒子の立体構造を捉えることが不可欠である。X線自由電子レーザー(XFEL)利用によるコヒーレントX線回折イメージング(CXDI)は、10ナノメートルからマイクロメートルのスケールで起こる生命現象を高解像度で解き明かすポテンシャルをもつ。位相情報のない回折パターンから試料の電子密度分布を解析するには、反復計算法により位相を回復する。この解析は、理想的な回折パターンにはかなり有効であるが、実験ノイズに大きく影響を受けることが分かってきた。本研究課題は、実験データから最も確からしい試料の電子密度分布を再生する位相回復法の開発を目的とする。平成25年度は、次の成果を得た。1. SACLAの利用実験で取得した様々な回折データに対して、HIO法やRAAR法などの位相回復法をShrink-Wrap法と組みわせて適用し、ノイズにはRAAR法の方が安定に動作することが分かった。一方、欠損領域に対しては、外形に対する制約の初期条件(初期サポート領域)がどちらの手法でも重要であった。2. 位相回復法は初期位相をランダムに与える。通常の解析は、初期位相を変えて複数回の位相回復を実行し、その平均イメージを解とする。ノイズや不感領域の含まれる実験データでは、初期位相に応じて多様な実イメージが再生されるため、単純な平均をとるだけでなく、統計処理により位相回復結果を評価すべきである。そのために画像の相関係数を利用した画像分類手法を開発した。さらに、実験データからの位相回復結果に適用し、その有効性を確認した。
3: やや遅れている
平成25年度は、SACLAの利用実験が順調に進み、様々な回折データに対しての位相回復計算が概ね予定通りに進んでいる。一方、当該年度にノイズ・不感領域など実験回折データの不完全性と位相回復結果の関係を明らかにする予定であったが、そのためには、位相回復結果である実イメージを定量的に分類する必要があることが判明し、その画像分類手法を先に開発した。
平成25年度の成果に基づき、ノイズ・不感領域など実験回折データの不完全性と位相回復結果の関係を明らかにすることで、本課題の目標である普遍的位相回復法の開発につなげる。
回折データの不完全性と位相回復結果との相関解析を当該年度に実施予定であったが、そのために新たに画像分類手法を開発しなければいけないことが判明した。当該年度は解析のための手法準備をし、解析は次年度に実施するため。次年度使用額により、当該年度に開発した手法による結果を可視化するためのソフトウェアを導入する。
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Nat. Commun.
巻: 5 ページ: 3052
10.1038/ncomms4052