本研究のXBIEMは元々メッシュフリーで境界面・破壊面 形状に制限のない解析法であるが、我々がこれまでに開発した数値計算コードは平面媒質境界を横切る平面亀裂の単純な幾何配置の問題に留まる。これを前進させ、複雑な媒質境界との力学的相互作用を 厳密に考慮しながら破壊経路が自在に選択可能な高度化された計算コードを開発する必要がある。
XBIEMを用いて、下向きに凹んだ表面地形をモデル化する場合に全無限グリーン関数を使うと、物理的に破綻しているように感じた。全無限グリーン関数は問題とする領域の変位場とは由来が別の変位場である。問題とする凹んだ表面地形の領域に表現定理を適用した場合、全無限グリーン関数を用いるが故に、媒質の存在しない外部においても直達波の存在を示すように見える。実際、境界積分方程式法の数値計算コードの内部表現では、凹んだ表面地形表面の2要素間の相互作用は全無限グリーン関数から計算され確かに直達波が届いている。計算法実現においてこの点を解決する必要があり、数学的検討を行った。
表現定理が意味するのは、境界面に沿って全ての要素からの全無限グリーン関数の寄与を合計すれば、外部できれいに打ち消し合い0になることが数理的に保証されることであった。従って、地表面が下向きに凹であれ上向きに凸であれ、表現定理に基づく定式化では、境界要素間の相互作用を全無限グリーン関数により評価し、それらを境界面上で足し算(積分)するだけで良いことを意味している。実際、数値計算において変位の評価点を問題とする領域の外側に取った場合、個々の要素からの寄与は値を持つ(直達波が存在する)が、全ての要素からの寄与の合計は確かに0となった。こうして、拡張積分方程式法(XBIEM)において、「全無限グリーン関数を用いた任意の有限領域の変形場の表現」が、媒質境界の任意の形状に対して有効であること示すことができた。
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