研究課題
基盤研究(C)
電気伝導度は地下の状態,特に間隙流体の存在やそのつながり方に敏感な物理量である.このため,沈み込むプレートからもたらされる水の循環の実態や地震・火山発生メカニズムを解明するためにその精度の高い3次元構造を求めることが望まれる.本研究では,精度の高い3次元電気伝導度構造決定を実現するため,広帯域MT法観測から得られる小スケール表層不均質によらない観測量と,同じく表層不均質によらないネットワークMT法観測から得られる観測量の同時3次元インヴァージョンコードを開発し,実データを用いてその有用性の検証を図る.本研究の最終目標到達点は,広帯域MT法とネットワークMT法の周波数応答関数をあわせて解析できる高精度3次元電気伝導度構造インヴァージョンコードを開発することにある.その達成にむけ,本年度においては,まず計算サーバの整備を行った.大規模な計算は地震研究所の大規模並列計算機(EIC)を用いて行う予定であるが,本研究で開発するコードのチューニングやテスト計算のために,ある程度の計算能力とメモリー容量をもった計算サーバを導入した.コンパイラーなどの環境を整え,これまでに開発してきた3次元広帯域MT法インヴァージョンコードや3次元位相テンソルインヴァージョンコード,3次元ネットワークMT法インヴァージョンコードが新サーバ上で従来通りの性能を示すかの検証をおこなった.次に,広帯域MT法観測データについて,表層の小スケール不均質に左右されない位相テンソルと磁場変換関数を融合したコードの開発を行った.本コードを用いて,確かに両応答関数を再現する構造モデルが求められることが確認できた.そこで,新たに開発したコードをいわき周辺域で取得した広帯域MT法観測データへ適用した.現在,いくつかのパターンのsyntheticデータを用いた検討や,実データでの初期値依存性などを調べている.
2: おおむね順調に進展している
本年度における研究の達成目標は,1)計算サーバの整備,2)広帯域MT法観測データにおいて表層不均質の影響を受けない位相テンソルと磁場変換関数を用いた3次元インヴァージョンコードの開発にあった.研究実績の概要で述べたごとく,1)についてはサーバを導入して,従来の3次元インヴァージョンコードが正常に走るかを確認し,2)については一通りのコード開発を終え,確かにそのコードが,観測位相テンソル,磁場変換関数を再現する比抵抗構造を求めようとすることを確認した.このため,おおむね順調に進展していると評価した.
本年度中に開発を終えた位相テンソルと磁場変換関数を用いた広帯域MT法インヴァージョンコードと,ネットワークMT法3次元インヴァージョンコードを融合して,広帯域MT-ネットワークMT同時3次元インヴァージョンコードを開発する.モデル比抵抗に対する位相テンソルや磁場変換関数,ネットワークMT応答関数の感度行列を計算する部分はすでに開発を終えているが,広帯域MT法とネットワークMT法では,基本的なデータ構造が異なる(広帯域MT観測点は点として扱えるがネットワークMT観測点は線ないしは経路として扱う必要がある)ため,両インヴァージョンを融合するには,多少の労力を要するものと考えられる.本年度に開発したコードを用いることで,位相テンソルや磁場変換関数を説明する比抵抗モデルが推定できることは確認できたが,インヴァージョンコードの性能評価(推定されるモデルのインヴァージョンパラメタ依存性の検討や,モデルが一意に決定されるための条件の模索など)はまだつくされていない.このため,それらのインヴァージョンコードの性能を十分に検討したうえで,得られた成果を,内外の学会や海外の学術誌で公表する.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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