研究課題/領域番号 |
25400446
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
海野 進 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (30192511)
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研究分担者 |
草野 有紀 金沢大学, 自然システム学系, 研究員 (00635972)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 巨大海底溶岩流 / オマーンオフィオライト / 巨大海台 / 流動・定置メカニズム / 冷却固化過程 / 噴火時間 / 産状 |
研究概要 |
オマーンオフィオライトでは解析された内部構造を3Dで広域的に観察できる巨大海底溶岩流が分布し,現在の海洋底では不可能な巨大海底溶岩流の内部構造を詳細に観察し,解析することができる。 25年度はオマーンオフィオライトの巨大溶岩流~V3溶岩流~の流動・定置メカニズム,冷却固化過程,マグマの岩石学・地球化学的特徴を明らかにするために,全岩主要元素・微量元素分析および現地における野外調査を行った。 前半はこれまでに採取した岩石試料について顕微鏡による微細組織,全岩主要元素・微量元素分析を行った。また,予定通り冬季に給源岩脈から溶岩流末端まで0.5-1 km毎に溶岩流最下部と最上部の急冷相の岩石試料と,溶岩流の中央部と末端付近を横断する2側線に沿って,露頭スケールの構造と岩石組織を観察しつつ試料を採取した。フィールド調査は研究分担者,研究協力者とともに実施した。 V3溶岩流はTiに富んだ普通輝石やかんらん石が斑晶から石基ステージまで晶出していることから,アルカリ玄武岩の一種であると考えられる。中央海嶺玄武岩の組成で規格化した微量元素のスパイダーダイアグラムでは,V3溶岩流はSun and McDonugh (1989)による海洋島玄武岩OIBと肥沃な中央海嶺玄武岩EMORBの中間的な特徴を示す。V3溶岩流の全岩組成変化は普通輝石28.6 wt%,斜長石18 wt%,磁鉄鉱0.6 wt%を分別した結晶分化経路と,結晶分化経路上の同源のマグマ混合によって説明できることがわかった。また,流下方向の全岩組成変化から,初期に未分化な溶岩流を噴出し,徐々に分化した溶岩流を噴出した後,再び未分化な溶岩流を噴出したことが判明した。このような全岩組成変化は溶岩流中央部の最も厚い場所における層序方向の変化とも調和的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,深海掘削サイト1256の巨大海底溶岩流のコア試料とオマーンオフィオライトの巨大海底溶岩流の野外観察データと岩石試料を用いて巨大海底溶岩流の内部構造・微細組織,全岩・鉱物化学組成を詳細に解析し,次の点を解明することである;1)陸上の巨大溶岩流との共通点と海底溶岩流に特有の特徴,2)巨大海底溶岩流の流動・定置メカニズム,冷却固化過程,噴火時間・噴出率,3)マグマの岩石学・地球化学的特徴。 今年度は,オマーンオフィオライトのV3巨大溶岩流の流下方向と層序方向の露頭観察・岩石試料採取を行い,溶岩流全体のマグマ組成の変化とその原因について明らかにできた。また,マグマの岩石学・地球化学的特徴が先行研究によって主張されたOIBではなく,OIBとEMORBの中間的な性質を持つことが明らかとなった。このことは,マグマの生成深度がOIBほど深くはないことを示す。 以上より,今年度の目的は概ね達せられたと評価できる。この成果は,H26年5月の地球惑星科学連合大会において発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は溶岩流主部の最も岩体が厚く発達した場所において層序方向の観察・岩石試料を採取した。次年度前半は,この試料の組織解析,全岩および鉱物化学組成の分析を実施し,溶岩流の冷却・固化過程についての考察を進める。また,その過程で浮かび上がった問題点を精査し,その結果,さらに重点的な観察と岩石試料採取が必要と判明した地点を中心に年度後半の現地調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査出張の日程・人員等が当初予定より変動したため未使用額が生じた。 平成26年度分と合わせて、調査出張の経費として使用する計画である。
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