研究課題
25年度はオマーンオフィオライトの巨大溶岩流「V3溶岩流」について,その流動・定置メカニズム,冷却固化過程,及びマグマの生成過程を明らかにするために,これまでに得られた溶岩流の構造データを解析し,全岩主要元素・微量元素分析に基づくモデル計算を行った。また,これらの成果をアジア・オセアニア地球科学連合や日本地質学会等で発表した。前半は昨年度までの現地調査で得られた溶岩流の構造データを解析し,全岩主要・微量元素組成の変化と合わせて考察した。V3溶岩流は頁岩層が出現する層準を境に大きく上下二層に分けられ,下部層はもっぱら上方から固化が進行し,最終的に最下部の塊状コアに溶岩が注入されたことが示された。このような固化過程は,Umino (2012)が示した内成的に成長した溶岩ローブと調和的である。これに対して,溶岩流上部は流出した溶岩ローブが下位から上位へと順次堆積していったことが判明した。また,組織・粒径の観察から,上部層は径1~100 mの多数のパホイホイ溶岩ローブが溶結したものであることが確認された。後半は最も変質の影響を受けていない未分化試料について,Faul(2001)のマントルカンラン岩の減圧融解モデルを参考に,中央海嶺玄武岩のソースマントルを融解してV3初生マグマの微量元素組成を生成するモデル計算を行った。その結果,初生V3 マグマ組成を説明するためにはザクロ石レールゾライトが0.2 wt%部分溶融したメルトと,その溶け残り岩がスピネル安定領域で融解したメルトの混合が不可欠であることが示された。
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すべて 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)