本研究の目的は,火山性地震や火山性微動の震源位置をリアルタイムにて推定するシステムを構築し運用することである. 昨年度に桜島火山対象に導入した振幅分布を用いた震源決定システムに今年度はトリガー機能を追加した.トリガー機能は2つの異なる時間長(短時間窓・長時間窓)におけるRMS振幅の変化率をトリガー判定基準にしており,トリガー判定基準を満たす観測点が基準数以上あれば地震(および微動)発生と判定して,振幅分布を用いた震源決定プロセスを稼働させる仕組みである. また,振幅分布を用いた震源決定においては各観測点についての地震波増幅特性の補正が必要である.そこで,2013年~2015年に九州の本土および離島周辺にて発生したマグニチュード4以上の深さ10km以上の地震を用いてコーダ正規化法にて観測点毎の増幅特性を求めた.増幅特性を求めるにあたっては5-9Hzバンドパスフィルターを施し,コーダ波振幅がノイズ振幅の3倍以上の場合のみコーダ振幅を各観測点について求めて,平均・分散を計算した.データとして使用した地震数は102であった.そして,有村観測坑道内の地震観測点を基準に各観測点の増幅特性値を求めた.増幅特性は0.8~7.4の範囲に分布した. トリガー機能を搭載した震源決定システムを2015年8月15日に桜島で起こったマグマ貫入イベントにて発生した群発地震に適用し,前述の観測点補正値を考慮して震源決定を行った.震源は南岳山頂部直下と山頂部から東へ2.5kmの地点との間で,深さ2~8.5 kmの範囲に求まった.震源領域は地殻変動から推定された開口割れ目ソースの深部延長部に対応する.初動走時による震源との比較を行った.地震毎に初動走時による震源と比較したところ,最大で7km程度のズレがあり,特に深さ方向へのずれが大きいことが分かった.ズレの原因について検討を進めていく必要がある.
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