研究課題/領域番号 |
25400450
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮澤 理稔 京都大学, 防災研究所, 准教授 (80402931)
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研究分担者 |
行竹 洋平 神奈川県温泉地学研究所, その他部局等, 研究員 (20435853)
大見 士朗 京都大学, 防災研究所, 准教授 (50263158)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 誘発地震 / 統合地震活動モデル / 繰り返し疲労破壊 / 群発地震活動 |
研究実績の概要 |
グローバルな地震活動から、互いに十分離れているにもかかわらず関係があると思われる地震活動群を確率論的に抽出し、その相互作用の物理メカニズムを考察した。まず任意の領域群における地震活動を説明する統合地震活動モデルを提案した。これを用いて実際の地震活動をモデル化することで、地震発生間隔を確率的に評価できるようにした。2014年6月に南太平洋ケルマディック諸島でM6.5以上の一連の地震活動(M6.9, M6.5, M6.7)が発生したが、その約1時間後に、北に約9,000km離れたアリューシャン・ラット諸島でM7.9のやや深発地震が発生した事象について調べた。この発生間隔は、離れた地震活動が互いに作用しないと仮定した統合地震活動モデルによると、確率論的に極めて稀なほど短いことが分かった。またケルマディック諸島のM6.7地震の地震波がラット諸島を通過しているときに、ラット諸島のM7.9地震が発生していた。従って、一連のケルマディック諸島の地震活動が、ラット諸島の地震を遠地誘発した可能性があることが分かった。地震波形記録から、ラット諸島のM7.9地震の震源に作用していた応力を計算したところ、わずか10Paのオーダーしかなかった。この値は誘発作用として働くには極めて小さいため、ケルマディック諸島における一連の地震活動が、地震波伝播を通じて繰り返し疲労を引き起こし、誘発に寄与したと考えられる。この議論は、ある閾値を超えた応力載荷によって地震が誘発される可能性があるというこれまでの概念を覆す発見である。 飛騨山脈南部において遠地誘発された地震を発見する目的で、気象庁一元化震源カタログにない多くの微小地震活動を検出した。具体的には、2014年の群発地震活動について、定常観測網や臨時観測網の波形記録に対し、波形相関法を適用させることで群発地震の検出を効率化させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
誘発地震を検出するための新たなモデルの開発ができた。またグローバルな地震カタログデータに対して同モデルを適用し、解析を行うことができた。これらの結果は論文にまとめ、欧文誌に掲載が決定されるにまで至っている。このため所期した研究目標に達していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
開発したモデルに対して誘発地震の検出に用いた地震カタログ記録は、マグニチュードが大きい物に限られ、また過去約1年間の記録だけであった。今後は地域は限定されるが、より長期間の小地震記録にまで解析対象を広げ、検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
大規模データを解析するために予てからストレージの購入を予定していたが、これまでモデルの開発を中心に研究を行ったこと、及び実際に利用したデータがまだ大規模でなかったことにより、早急に導入を進めずとも既存の計算機で対応可能であった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後データの解析期間とマグニチュードの下限値を下げることで、解析する地震数を増やすなど、大規模データを取り扱う予定であるため、大型ストレージを購入する。また研究成果についても発表を行う準備が十分整ったため、国内外の学術大会に積極的に参加し成果発表や情報交換を行う。
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