研究課題
不均質性と非線形性が複雑に絡み合った岩石の変形機構は,他の物性系分野では見られない地球科学特有の現象であり,近年,様々な新規データが,実験・観測分野で集積しつつある。この現象の本質は、岩石の非局所的な変形機構にあり,その理論的記述は連続体力学に基礎を置くが,十分には成功していない。一方、非局所的関数を記述する数学理論として,分数階微積分がある。連続体力学は微積分に基づくので,これを分数階微積分に置き換え,地球連続体力学を再構築し,岩石の非局所的変形機構を考察する。フラクタル媒質中における弾性変位場は,典型的な非線形かつ非局所な物理場である。それを記述する基礎方程式を,分数階微分の観点から考察した。通常,岩石変形におけるダイラタンシー効果の空間変化率と,変位勾配に関するダイラタンシーは一致する。しかしながら,フラクタル媒質における分数階微分の非可換性から,この二つは厳密に区別しなければならないことが示された。逆に,この不一致性から,岩石変形における上記の非可換性,つまり次元の整数値からのずれを,定量化できる可能性が示唆された。この観点から,断層破砕帯における非整数次元を見積もり,従来のフラクタル次元との比較・検討を行った。さらに1次元フラクタル媒質中における波動現象の基本的性質を,分数階微分の観点から定量化することを試みた。これは,断層破砕帯中における地震波動と密接に関係するものであり,今後,さらに研究を進めていく必要性がある。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件)
International Journal of Geometric Methods in Modern Physics
巻: 13 ページ: 1650045-1650061
http://dx.doi.org/10.1142/S0219887816500456
Austin Journal of Earth Science
巻: 2 ページ: 1018-1022