研究課題/領域番号 |
25400453
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中村 昭子 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40260012)
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研究分担者 |
和田 浩二 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (10396856)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小惑星 / 衝突 / 数値シミュレーション / 微小重力 / レゴリス |
研究実績の概要 |
実験:前年度作成した装置を用いて、大気中で試料容器を自由落下させて0.01 Gの模擬微小重力下での砂とガラスビーズへの低速度衝突クレーター形成実験を行った。大気中で0.5 -1 Gの範囲では、クレーター直径は重力加速度の約-0.2乗に比例し、先行研究の結果と調和的である。一方、0.01 Gでは、上記の重力依存性から予想されるクレーターサイズよりも小さいクレーターが形成された。粉体の固着力をRumpf式により見積もったところ、0.01 Gで形成されるクレーターサイズに対して固着力の影響が無視できなくなっていると見積もられた。一方で、大気が影響を与えている可能性も動画の観察等から示唆された。 上記の微小重力実験結果をうけ、真空チャンバー内でクレーター形成実験を行うための冶具や真空部品を整え、1 Gのもとで、大気圧を数 Pa - 1 気圧の範囲で変化させて低速度クレーター形成実験を行った。その結果、高速度衝突の先行研究と同様に、大気の影響がクレーターサイズに現れること、すなわち大気圧が小さくなるにつれクレーター直径は大きくなることが明らかとなった。 さらに、従来は試料容器の上から観察していたクレーター形成の様子を、容器の水平方向から観察するために高速動画取得機能のあるデジカメを試料容器と同時に落下させるシステムを構築した。
数値シミュレーション:前年度までに目途がたった粉体層において、重力を変化させると空隙率が変化する様子が再現された。この結果は粉体層ターゲットにおける初期条件の重要性を示唆するものである。また、粉体層における衝突によって生じる放出物(イジェクタ)量は、反発係数や摩擦係数といったエネルギー散逸をもたらす粒子間相互作用によらないことが明らかになりつつあり、重力の影響にフォーカスしたパラメータスタディがより重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験:試料容器を自由落下させることによって、0.01 G以下の模擬微小重力を達成することができた。真空チャンバーを整備して、1 Gのもとで大気圧を変化させて低速度クレーター実験を行った。さらに、試料容器とともにデジカメを落下させるシステムを構築するなど、装置を改良した。 低速度クレーター実験においても、真空度がクレーターサイズに影響を与えることを示し、今後の実験では、小天体でのクレーター形成を考える上で重要である真空度もパラメタとして扱うという方向性を確認することができた。
数値シミュレーション:粉体層の形成ならびに衝突シミュレーションによるパラメータスタディに着手しつつあり順調である。
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今後の研究の推進方策 |
実験:大気のない天体上でのクレーターサイズの重力加速度依存性を明らかにするために、大気圧を数 Paとしたチャンバー内で、模擬重力を0.01 Gと1 Gの間で変化させた低速度衝突クレーター形成実験を行い、1 気圧のもとで0.5-1 Gで確認された、『クレーター直径が重力加速度の約-0.2乗に比例する』関係が成り立つかどうかを調べる。 並行して、大気圧がクレーターサイズに影響を及ぼす原因について調査する。具体的には、まずは、粒子層の内部摩擦角が大気圧に依るのかどうか、内部摩擦角の変化でクレーターサイズの大気圧依存性が説明できるかどうかについて調べる。
数値シミュレーション:より重力の影響に絞ったシミュレーションを展開し、実験結果との直接比較を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度と次年度に研究成果報告と研究打ち合わせのための旅費が必要となったため、真空チャンバーは本実験用に新たに導入するのではなく既存のものを利用することとし、冶具や真空部品等を付加することによって低速度クレーター実験を可能とした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果報告と研究打ち合わせのための旅費として用いる。
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